最近のドラフト候補の球児がプロ野球を見ていないって本当だった…オリックス4位指名の報徳学園“バスーカ捕手”堀が「パってどっちでしたっけ?」の天然回答で大物ぶりを発揮?!
常勝軍団を目指すオリックスは将来を見据え、驚くことにドラフト1位から4位まで高校生を指名した。育成に定評のあるオリックスの指名は堀にとってプラスだ。正捕手は、堀が口に出した今季FAで西武から移籍してきた森で、若月健矢も96試合に出場したが、彼も来年で11年目となり、次世代の捕手育成がチームのテーマ。
しかも、中嶋聡監督はプロ野球最年長マスクのレジェンド。
堀は「積極的に話しかけて、いろいろ教えていただければ」と目を輝かせた。さらにバッテリーコーチには報徳学園OBの山崎勝己氏がおり、大角監督も「ずっと気に掛けてくれていましたし彼がいるので安心して預けられる」と話す。
大きな期待を寄せられ、プロの世界に飛び込む堀の原点は、自宅から徒歩5分の須磨海岸にある。この日、母・悠さん(39)とともに会場に来ていた父・一也さん(40)は、漁業を営んでいる。タコ漁がメインだ。昨夜は一睡もできず、この日は、午前3時から「若宮丸」に乗り込み、漁に出ていたそうだが、堀も小さい頃は船に乗って、手伝いをしていたという。
「家にいるのが嫌いな子で砂浜を走り回っていました。それで足腰が強くなったのでしょう。最初はサッカーに興味を持ったんですが、わたしは野球選手になってほしいと思い、キャッチボールを始めてからは野球がどんどん好きなりました」
若宮小3年から西須磨シーホークスで野球を始め、そのときも砂浜がランニングコース。その後、東須磨少年野球部へ。鷹取中では兵庫夙川ボーイズに所属し、才能を発揮するようになった。
「とにかく、野球では負けず嫌い。ランニングだったりスイングスピードだったり、友だちと競いあって、勝ちにこだわっていた」と一也さん。父子で入団を決めた夙川ボーイズでは、現阪神の水口栄二1軍打撃コーチから指導を受け、自信をつけたという。
その頃から堀に目をつけていた大角監督が、こうエールを送る。
「夙川ボーイズのときから”この子は絶対にプロに行ける”と言われていたので、それがかなって良かった。魅力は強肩。それとピッチャーを引っ張っていける内面的な強さもある。まだまだ子供っぽく、野球が好きなだけの少年ですが、今後、仕事をする中で責任感が出てくれば楽しみ。球団からもファンからも必要とされる人間、選手になってほしい」
堀もプロの厳しさは百も承知だ。
「まずは体を大きくすること。目標は85キロ」と話し、現在は下半身を中心としたウエートトレーニングに力を入れながら大好きな豚肉、魚料理をたくさん食べることで、3キロ増の82キロとなったが、まだ成長途中。研究熱心で1学年上で横浜DeNAに昨年のドラフトで1位指名された大阪桐蔭の松尾汐恩を参考にしているという。
「自分よりうまい人ばかりで、挫折もすると思いますが、1日1日しっかり練習して1日でも早く一軍で活躍できる選手になりたい」
オリックスのドラフト4位といえば、イチロー、山本由伸を生み出した出世枠。本人は「順位は関係ない」というが、報徳学園で学んだ「継続力」を忘れなければ目標とする「打てる捕手」「トリプルスリー」も夢ではない。
(文責・山本智行/スポーツライター)