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岡田監督の采配がズバズバ的中した
岡田監督の采配がズバズバ的中した

なぜ阪神は日本S初戦でオリ“4冠”山本由伸から7点を奪いKOできたのか…岡田監督の心理の裏をかくサトテル盗塁と直球狙いの絶妙采配

 さらに“恐怖の8番”木浪も、またファーストストライクの154キロのストレートを狙い打って、一、二塁間を破り、一、二塁とチャンスを広げる。
 岡田監督は続く坂本にバントのサイン。だが、ポーンと打ち上げて失敗。山本が前進してキャッチする小フライとなった。阪神OBで、1985年の日本シリーズでは、第1戦に完封勝利している評論家の池田親興氏は、ここに記録に残らないミスがあったという。
「打球をダイレクトで捕球をせずワンバウンドにしてダブルプレーを狙えた。捕手からの指示もなかった。まったく警戒せずに佐藤に初球に走られた精神的なショックが残っていたのだろう。ここで1失点止まりであれば、立ち直るきっかけもあったと思う。盗塁、渡邉の7番起用。岡田監督の打つ手が山本を狂わせた」
 送れなかったが、二死一、二塁から、近本が甘く浮いた156キロのストレートをドンピシャのタイミングで捉えて右中間を真っ二つ。2者が生還するタイムリースリーベースとなった。続く中野は、フォークにうまく反応して、体勢を崩しながらも技ありの一打で三遊間を破り、防御率1.21の絶対エースから一挙4点を奪ったのである。下位打線から1、2番につなぐ、18年ぶりのアレを成し遂げた阪神得意の得点パターンだった。
 阪神は続く6回も二死一、三塁から木浪が再び153キロのストレートを流し打って1点を追加、坂本が三塁線を破るタイムリーツーベースを放ったところで、中嶋監督がマウンドに向かってエースの交代を告げた。中嶋監督に何やら声をかけられた山本は、悔しそうな表情を浮かべた。2番手の山田から中野が、山本が残した走者を還して、山本は7失点KO。入団以来ワーストタイ記録だった。
 5、6回に集中した8本のヒット中、5本がストレートを捉えたものだった。
 試合後、岡田監督は、山本を攻略するために「真っすぐを打ってフォークを見送れ」とミーティングで指示していたことを明かした。
 岡田監督の好投手攻略の基本が「ストレート狙いでフォークを捨てる」である。
 「空振りするフォークってボールやろ?ボールを打つ練習ってどうやってやんの? どうやって教えんの? そういうことやろ」というシンプルな発想。高い打撃技術を持つ選手が揃っているからこそ、このシンプルな戦術がはまる。
 加えてシリーズ前から岡田監督は「(山本を)そんなにええと思てない。(オレが現役なら何狙う?)そら真っすぐやろ」と発言し、山本に心理戦を仕掛けていた。計算を尽くした岡田監督の采配が的中したのである。
 池田氏は、阪神が山本をKOに追い込んだ理由をこう分析した。
「山本はカーブを12球投げてストライクになったのが3球だけ。ストレートは走っていたし、調子は悪くなかったと思うが、カーブを制球できなかったことで緩急をつけることができなくなり、フォーク、ストレートの単調な配球になった。集中打を浴びたイニングは、そのストレートが甘く浮いた。阪神打線がフォークを捨てるので、なおさらストレートを投げざるを得ない状況になったのだろう。阪神が戦略的にそう追い込んだとも言える。村上が素晴らしい投球を見せて、ゼロを並べたこともプレッシャーになって、彼に本来のピッチングをさせなかったのだろう」
 池田氏が指摘するように村上は7回100球を投げて2安打無失点。オリックス打線に何もさせなかった。最速は152キロをマークし4回までパーフェクト。打者22人に対して初球にストライクを取ったのがなんと19人。抜群の制球力で、しかも臆さず、内角を攻めた。左足の疲労骨折からDHで復帰した頓宮のバットは2本叩き折った。
 6月の交流戦では山本と投げ合って8回を2失点(自責は1)と及第点の内容だったが「交流戦で投げ合って負けていたので、リベンジをしたいと思って上がった。良い緊張感が力に変わったので良かった」という。

 

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