「本当にしびれた」何が阪神vsオリ1点差ゲームの明暗を分けたのか…「これぞ日本S」岡田監督と中嶋監督の“究極の采配対決”
日本シリーズの第3戦が10月31日、甲子園球場で行われ、オリックスが5-4で阪神に逆転勝利し対戦成績を2勝1敗とした。オリックスは1-1で迎えた5回に阪神の守備の乱れなどをついて集中攻撃をして3点を奪って勝ち越した。阪神も7回に森下翔太(23)の2点タイムリーなどで1点差に詰め寄り、9回にオリックス“守護神”の平野佳寿(39)を二死一、二塁まで追い詰めたが力尽きた。日本一決定戦にふさわしい1点差ゲーム。何が勝敗を分けたのだろうか。
伊藤将が犯したミスへの伏線
「本当にしびれる試合…本当の意味でしびれる試合になりました」
それがオリックス中嶋監督の甲子園のお立ち台での第一声。インタビュアーへの“塩対応”がいまや愛されるキャッチフレーズと化している指揮官が本音を漏らした。
1点リードで迎えた9回に守護神の平野は、先頭の代打原口を歩かせた。続く近本はフルカウントから二ゴロに打ち取ったが、阪神ベンチが代走の植田にスタートを切らせていたため、進塁打となった。二死を取ったが、2安打2打点の森下にも四球を与え、長打が出ればサヨナラという一、二塁のピンチで4番の大山を迎えた。
フルカウントからのフォークボール。見送ればボールだったが、今季の“四球王”のバットは空を切った。制球に四苦八苦していた日米通算250セーブを誇る39歳の大ベテランが一枚上手だった。平野は勝利の雄叫びをあげた。
しびれる1点差ゲームの勝敗を分けたポイントはどこだったのだろう。
両軍ベンチの采配、心理戦が激しい火花を散らせたのが1-1で迎えた5回のオリックスの攻撃だった。奥深い野球の攻防がそこにあった。
オリックス先頭の紅林がライト前ヒットで出塁すると、続く若月の打席で、カウント2-0から中嶋監督がエンドランを仕掛けた。伊藤将は、その前にひとつ牽制球を入れて警戒をしていたが、ボールが先行して作戦カウントを与えてしまったのが、そもそものミス。ただセオリーでは、2-1になるまで1球様子は見る。だが、この決断の早さが中嶋監督の采配力だった。
伊藤将の制球力を読み、先に手を打った。ストライクを取りにきた甘いストレートを若月がセンターへ返して、エンドランが成功し、無死一、三塁となった。
岡田監督は、内野の前進守備を敷かなかった。1点は与えていい。まだ勝負は先と読み、大量失点を避けることを選んだ。両軍の指揮官の読みの勝負である。
伊藤将は、廣岡をショートゴロに打ち取った。岡田監督の戦略がはまったかのように見えた。だが、廣岡が全力疾走。併殺が崩れ一塁がセーフとなり、勝ち越しを許して、さらに一死一塁と走者を残したのである。
続く打者は、投手の東。打席に立たないパの投手ゆえに、当然、バントの機会は多くない。3回の最初の打席では、バスター打法などを試みて、なんとかバットに当てセカンドゴロにすると、中嶋監督が声をあげて、その健闘ぶりに大笑いしていたほど。阪神はDH制のない甲子園の地の利を生かしてバントを防ぎにいった。その初球。一塁の大山と三塁の佐藤が100%バントだと見切って、異例の猛チャージをかけたのだ。だが、伊藤将のそれはボールとなった。ここはストライクを投げてバントをさせなければならなかった場面。後から考えると、このチグハグさが送球ミスへの伏線だったのかもしれない。
阪神の攻撃的な守備は東にプレッシャーを与えた。続く2球目に内野はチャージをかけなかったが、東のバントは投手の正面に転がった。だが伊藤将が焦った。二塁への送球がハーフバウンドとなり、カバーに入った木浪が捕球できず、併殺でチェンジになっていたはずが、一、二塁とピンチを広げることになったのだ。