「ナゼ。山本由伸を投入しなかった?」阪神の大逆転を許した“8回の悪夢”はオリックス中嶋監督の継投ミスだったのか?
森下は、7回二死一塁から森のセカンドゴロをエラーした中野のカバーを素手で捕りにいき、手につかずダブルエラー。一塁走者宗の生還を許すという痛恨のミスを犯していた。しかも、ここまで3タコ。2度は走者を置きながらの凡退である。
「エラーをして迷惑をかけた。何とか自分の前にランナーを出そうと先輩たちが必死になってくれたので、あそこは絶対返すという強い思いで立ちました。感触はあったんで、本当に抜けてくれと思って祈りました」
試合後、岡田監督も、「今日は全然ダメな方だったが、最後の最後に、みんなから“センターに打て、センターに打て”と言われて、やっと3番らしい働きした」と明かした。センター狙いで食らいつく森下にとって、おあつらえむきのボールとなったのだ。
もうストレートを高めに投げるコントロールに自信がなくなったのか。宇田川は、続く大山にはフォークを4球も続け、さすがに対応されてセンター前タイムリーを許す。ここで交代。マウンド上で平井投手コーチに肩を抱かれた宇田川は、泣き顔でずっと下を向いたまま。宗やゴンザレスに励まされても顔を上げることができなかった。
阪神OBでパの野球に詳しい評論家の池田親興氏は、「監督の采配というものは打たれたらミス、抑えたら正解」とした上で、こう継投の場面を分析した。
「田嶋はまだ83球で球威も落ちていなかった。阪神ベンチからすれば続投の方が嫌だったと思う。山﨑颯も、2試合ベンチを外れて投げてみなければわからないという不安があった。おそらく中嶋監督は1点差ではなく、2点差になったことで、8回山﨑颯、9回平野の勝ちパターンへのスイッチを決断したんだと思う。だが、実際、山﨑颯はボールが走っていなかった。先頭の木浪をエラーで二塁までいかせたことも誤算だったが、空振りが取れず、糸原にファウルに粘られるなど、本調子ではなかった。宇田川は高めのストレートの制球力がなかった。森下に打たれたストレートも、高めにいっていれば、あの結果ではなかったと思うが、やはり3連投の影響があったのかもしれない。ブルペンの状態がいつもと違ったのであれば、いつもの継投パターンに持ち込むことは危険だった。選択肢としては、田嶋の続投を選ぶべきだったのかもしれない」
そして池田氏が、疑問として投げかけるのが、3年連続投手4冠のエース、山本由伸のベンチ入りだ。スポーツ各紙の報道によると岡田監督も「なんで入れているんやと思った」という。
「なぜ山本をベンチに入れたのか。その狙いはわからないが、こういうブルペンの状況を考慮しての準備であったのであれば、8回に山本を使うべきだったのではないか。湯浅を8回に使ってムードを変えた阪神の継投とは対照的になった」と池田氏。
中嶋監督は、山本のベンチ入りの意図を明かさなかったが、ブルペンで何度か肩を作り5年ぶりとなる中継ぎのスタンバイをしていたという。2試合ベンチを外れていた山﨑颯、3連投の宇田川という不安要素を考えれば、この8回こそ山本投入のチャンスだったのかもしれない。
対照的に岡田監督は、前日の甲子園を沸かせた1球救援に続き、湯浅を8回のマウンドに送り、三者凡退に抑えて、8回の反撃ムードのお膳立てをした。