阪神の岡田監督が秋に仕込むV2への布石…目を付けた投打の“ロマン戦力”は?
阪神の高知・安芸での秋季キャンプは13日、第3クールを終えた。参加メンバーの中心は今季2軍でプレーした若手でチームの底上げが狙いだが、岡田彰布監督(65)は、投打に期待の次世代戦力をみつけた。チームの競争力をアップさせるV2への布石だ。
小野寺にさっそくアドバイス効果
岡田監督がグラウンドに立つだけでピリッとした緊張感が漂う。秋季キャンプに集結させたのは、ほとんどがファームのメンバー。雲の上の日本一監督を前に背筋がピンと伸びる気持ちになるのも無理はない。
「今日はもうティー(打撃)から良くなっていたな。打球が飛んでたよ」
前日の練習で4年目の小野寺暖(25)を1時間マンツーマンで教えた。
バットのヘッドを立てよ、という岡田打法。打球にスピンをかけて飛ばす奥義で、一朝一夕に身につくような簡単なスイングではないが、それを試みただけで、明らかに小野寺の打球の伸びが違っていた。もともと内角球を逆方向へ器用に打てる。その長所を残しつつ、そこに長打力が加われば魅力が増す。今季は43試合に出場。夏場に起爆剤となり打率.347、11打点の成績を残した。
岡田監督が「良くなっていた」と言ったのは、小野寺一人の話ではない。野手全員のティー打撃を指す。岡田監督が、教えたのは小野寺だが、他の打者も、何を教えていたかを見ていて、そのエッセンスを各自が取り入れたのである。
2年目の前川右京(20)の打球音も違っていた。本来のパワーに加えてボールを呼び込むタイミングに天性のものがある。彼も今季は5月末の交流戦から1軍に抜擢され、6月に月間打率.358をマークし、3番まで打ったが、発熱などの体調不良で、8月に離脱、その後、左肩を痛めてスローイングに難があったことなどから、再チャンスは巡ってこなかった。
岡田監督は「熱が出たりケガをしたりあんなんばっかりやったからな。体が元気やったら」の条件つきながら「そりゃ戦力になる」と評価している。この秋から冬にかけては体の“強さ”を身につけたい。
もう1人指揮官が目をつけたのは背番号「121」の九州産大から育成ドラフト1位で入ったルーキー野口恭佑(23)だ。この日もランチ特打で柵越えを連発させていた。
「野口はええよ。リストワークが使える。大学で木のバットで打ってきたからか、間もあるし、フルスイングしているわけではないのに打球が飛ぶんよな」
飛ばす能力が何よりも魅力のロマン砲。ファームでも4番を任され打率.303、6本塁打。大卒のわりには、まだ振り込みが足りていないのか、数を打つとスイングにムラは出る。ただ岡田監督は、この右のスラッガーに可能性を感じている。
守備練習では、小野寺と渡邉諒(28)の2人が三塁のポジションを守っていた。前日の練習では、岡田監督が渡邉のスローイングを直々に修正した。明日15日の第4クールからはファームではDHや右翼が定位置だった野口にも三塁の守備に挑戦させる。
侍ジャパンに招集されてキャンプ不参加の佐藤輝明(25)もウカウカしていられない。日本シリーズでは打率.148の大不振で“逆シリーズ男”に終わっていた。岡田監督が、ロマン砲の2人にサードをやらせる理由には、その佐藤のケツを叩く「刺激」という意味合いもある。そういう競争力がチームを底上げする。今季、木浪聖也(29)が、恐怖の8番打者としてブレイクしたのも小幡竜平(23)との競争があってのもの。これも岡田監督が仕込んだ目に見えないチーム強化策のひとつだった。