トライアウトでアピールに成功した人と失敗した人…元ヤクルト編成部長のノムさん“右腕”は阪神の高山俊と広島の薮田和樹をどう評価した?
またヤクルトを昨年に戦力外となり独立リーグの火の国サラマンダーズでプレーしている中山は、現役ドラフトで中日から横浜DeNAへ移籍した笠原祥太郎(28)から豪快な一発をレフトスタンドへ放り込んだ。だが、松井氏は「右打ちを見せるなど成長は感じるが、まだ高めのストレートがファウルになり、外のボールの変化球に手を出すなど弱点は修正しきれていない」と分析した。
投手の参加者にもタイトルホルダーが2人いた。
広島の薮田和樹(31)は、2017年の最高勝率投手。高山をフォークで三振に斬って取ったが、あと2人は四球で歩かせた。最速は144キロ出ていたが、本人も「もっと披露できる部分があったと思う」と悔しそうだった。
2018年に最多勝タイトルを獲得した元西武の多和田真三郎(30)は、軟式野球でプレーを続けていたそうで、元気な姿を見せ、最速は143キロをマーク。ソフトバンクの居谷匠真(20)から三振も奪った。
松井氏は「薮田も多和田も全盛期に比べるとボールに力がなくなっていた。厳しい言い方だが、衰えは隠せなかった」と辛口評価。
中でも松井氏が注目していたのは、2015年に中日、日ハムと3球団が競合してソフトバンクに入団した髙橋純平(26)。2019年に45試合に投げ、3勝2敗17ホールド、防御率2.65の成績で日本一に貢献した。この2年1軍登板はなかったが、カットボールやフォークを昨年に会得し、「なんとか食らいついてやろうという気持ちをもって練習してきた」という。
最速は148キロをマークし、ロッテの西川僚祐(21)をファウルで追い込みフォークを落として三振を奪うが、オリックスの園部佳太(24)に三遊間ヒットを打たれ、元同僚の早真之介(21)には、ひっかかったカットボールが死球になるなどアピールの成功とはいかなかった。
「変化球の曲がりが早くなってしまっていた。育成クラスの打者でさえ、手を出す反応がなかった。いい時の持ち味が消えてしまっていた」と松井氏。
横浜DeNAのブルペンを支えてきた左腕の田中健二朗(34)は、西川に一発を浴び、平田真吾(34)もストレートが143キロ止まりで、松井氏は「結果を残していた時と比べると物足りなかった」という感想を抱いた。
この日の41人の中で最速の152キロをマークしたのは楽天の高田萌生(25)だった。元広島で火の国サラマンダーズでプレーしている山口翔(24)も149キロをマークするなどしたが、松井氏は「2人に共通しているのは一番いいボールでストライクが取れないこと。ボールの速さは武器になるが、150キロ前後くらいならば、プロの1軍ではプラス制球力がなければ通用しない」という見方をした。またアンダースローに転向した元巨人の坂本工宜投手(29)についても「左打者への対策がまだ不足している」と指摘した。
59人の再起をかけた挑戦は終わった。各選手は「あとは連絡を待つだけ」と口を揃えたが、吉報は誰に届くのだろうか。ちなみに昨年は中日を戦力外になった三ツ俣大樹がヤクルトに、ロッテをリリースされた西巻賢二が横浜DeNAへ入るなど4人がトライアウトからNPB復帰を果たしている。