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4階級制覇王者の井岡一翔が大晦日に8位のぺレスと初防衛戦を行う。これが12度目の大晦日リング。エストラーダ戦の実現のために負けられない試合となる
4階級制覇王者の井岡一翔が大晦日に8位のぺレスと初防衛戦を行う。これが12度目の大晦日リング。エストラーダ戦の実現のために負けられない試合となる

なぜ井岡一翔はエストラーダとの統一戦が実現せずとも大晦日の世界戦を決断したのか…危険な“落とし穴”が待っている状況「リスクを背負っても勇気を届けたい」

 プロボクシングのWBA世界スーパーフライ級王者、井岡一翔(34、志成)が大晦日に東京の大田区総合体育館で同級8位のジョスベル・ぺレス(28、ベネズエラ)と防衛戦を行うことが27日、都内のシャトーアメーバで発表された。当初はWBC世界同級王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(33、メキシコ)と対戦交渉を進めていたが、ファイトマネーで折り合いがつかずに流れた。井岡は、王者の責任と、ファンの期待に応えたいとの思い、そして来年5月を目標に交渉継続中のエストラーダ戦を実現するために「止まれない」と気持ちを切り替え、通算12度目の大晦日のリングに立つことを決めた。試合はABEMAで無料生配信される。

 

 「チャンピオンとしてランカーと戦うのは当然」

 

 “大晦日の顔”井岡が通算12度目となる12月31日のリングに上がる。
「今年の大晦日も戦いたい気持ちが強かった」
 井岡は、WBO王座を返上し、無冠からWBA王座に挑戦する形で、6月24日にジョシュア・フランコ(米国)に判定勝利を収めると、陣営はすぐにラブコールを送り続けてきた“ビッグネーム”エストラーダとの交渉に入った。中継はABEMAの無料生配信で大晦日に大田区総合体育館を抑えていたが、アマゾンプライムやdocomo「Lemino」に代表される配信映像会社の巨額マネーを背景にした日本の“ボクシングバブル”を見込んだエストラーダ陣営から法外なファイトマネーを要求され交渉は難航。約2週間前に時間切れとなった。
 もう考える時間もほとんどない中で、8位のランカーとの通常の防衛戦に切り替えた決断の理由を井岡がこう明かす。
「ずっと戦いたいと言ってきたエストラーダと長い交渉が続いた。陣営がベストを尽くしてくれたが、なかなか条件が厳しくて年内にできないとなった。可能性として大晦日に防衛戦をするのか、しないのか。試合はしたかったし、エストラーダ選手と戦いたいという気持ちのなかで、そこだけを目指すのは違うと思った。チャンピオンとして戦い続けて最終的には実現させたいが(今ここで)止まれない。自分自身の挑戦として、大晦日で試合を見たいと思っている方々に見ていただきたいと決断した」
 チャンピオンの責務。そして試合をしたいのか、したくないのか、と「シンプルに考えた」上での決断。
「リスクやメリットばかりを考えると、なかなか踏み出せない。チャンピオンとしてランカーの選手と戦うのは当然のことだと思う」と言う。
 決断を迫られる中で「戦わずに家族とクリスマスから年末年始をゆっくり過ごそうか」との思いも駆け巡った。だが「それは何か違う」と感じた。
「今しかできない現役生活のなかで大晦日は特別な日でもある。今年もゆっくりせずに最後の日に試合をして、いい年をみなさんと迎えたいと思った」
 34歳。この先のボクシング人生は長くない。ならば、王者として大晦日のリングに立てる“選ばれしボクサー”の権利と時間を大切にしようと考えた。
 2011年から続いてきた“大晦日ボクシング”を守らねばならないとの責任感もある。いやファンの期待に応えたいとの原点だろう。
「責任感というそこまで大げさな言い方じゃないが、自分の試合を見たいと期待して下さる方々がいるのであれば、大晦日に試合をしたいと思った」

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