プロ野球トライアウト参加の“戦力外の男たち”を巡って水面下で起きている新潟、ハヤテ223、台湾プロの三つ巴の“意外”な争奪戦
両チームともにNPB、外国人を含めて10人前後の戦力外選手を獲得予定。合わせて、15人前後の“戦力外の男たち”の争奪戦が繰り広げられていることになる。関係者の話によると、数十万から100万円単位でのマネーゲームになっているとか。NPBのFA選手の交渉に比べると桁は違うが、大きな興行収入を見込めず1軍を持たない2軍のチームにとっては、決して小さくない金額だ。
そして、この2球団に割り込んできているのが、台湾プロ野球CPBLのチーム。トライアウトには、GMやスカウトなどが派遣されていた。台湾プロ野球は、6チームで運営されているが、日本人コーチのいる富邦ガーディアンズ、味全ドラゴンズなどの3チームが特に熱心で、地元出身ということでオイシックス新潟アルビレックスが獲得を打診していた中日から現役ドラフトで横浜DeNAに移籍していた左腕の笠原祥太郎は、台湾でプレーする方向を検討しているという。
台湾プロ野球は、本来は月給制でダメなら翌月に解雇というシビアな契約らしいが、NPB組に対しては、年俸制でオファー。500万円以上の条件を用意して交渉を進めているという。
なぜなのか。そこにはエンゼルスの大谷翔平が先陣を切って侍ジャパンが優勝した今春のWBCが強く影響しているという。
事情通の球界関係者が、こう説明する。
「これまで台湾は、日本よりもメジャーの野球をお手本にしてきたんですが、WBCでの日本の圧倒的な勝利を見て、日本の野球が見直されているそうです。すでに日本のNPBのコーチを招聘しているチームが何チームもあります。日本選手を獲得することで、そこから技術を学びたいという背景もあるのでしょう。選手にしても、将来的に指導者などを考えているのであれば、海外での経験は貴重ですし、レベルが多少落ちる台湾野球の中で出番が多くなればやりがいも出ます。新潟とハヤテ223の選手争奪戦における最大のライバルは台湾の球団かもしれませんね」
今季台湾CPBLでプレーしたのは、元ヤクルト、楽天の由規投手が、楽天モンキーズで投げただけ。ただコーチ陣は富邦ガーディアンズに元ロッテ、西武の垣内哲也氏、元日ハム、阪神の酒井光次郎氏、味全ドラゴンズに元楽天、高須洋介氏など6球団に9人がいる。
新潟、ハヤテ223でプレーすることは、NPBの各球団の編成担当が力を把握しやすく、シーズン途中に何らかのアクシデントや想定外の事態が起きて、緊急補強を欲するチームから7月末の期限までに獲得オファーが届く可能性がある。NPB復帰への新しい道筋が拓ける可能性を秘めており、戦力外の選手にとっては、そこは魅力だろう。だが、条件面や、NPBでなくとも、この先の長い野球生活を求めるのであれば台湾野球という選択肢もありだ。“戦力外の男たち”を巡っての争奪戦の行方に注目したい。