「社会が廃部にしないと許してくれない。3年後に復活を」…格闘家の青木真也が斬る「日大アメフト廃部問題」
日大が大麻及び覚せい剤の取締法違反の疑いで3人の逮捕者と1人の書類送検者を出したアメリカンフットボール部の廃部を決めた問題が波紋を広げている。部員の行為と寮内に蔓延していたみられる“大麻汚染”に救いの余地はないが、廃部への経緯が不透明で、その理由も明らかになっていないまま、連帯責任を負わせるような決定に賛否の声が起きている。その中で1月28日に有明アリーナで開催されるアジア最大級の格闘イベント「ONE165」で1年2か月ぶりにMMAの試合を行う“モノ言う”格闘家の青木真也(40)が、持論を展開させた。日大は管轄官庁の文科省に提出した改善策についての説明会見を週明けの4日に開催する。
廃部へのプロセスが不透明
甲子園ボウル優勝21度、ライスボウル優勝4度の名門「日大フェニックス」の廃部問題が大きな波紋を広げている。
アメフト関係者からは当然のように反対や疑問を投げかける意見が殺到した。
2018年の悪質タックル問題が起きた際の当事者で、日大と永遠のライバル関係にあった関学アメフト部の前監督である鳥内秀晃氏は、テレビ朝日系「報道ステーション」や、MBS系列の番組に出演。
「逮捕者が2人から3人になって急に廃部というのは何か違うんじゃないか」「逮捕された罪を犯した人間が罰を受けるのは当たり前。それ以外の子の夢まで取ってしまうのはどうか」「廃部ありきで話が進んでいるみたい。行き当たりばったりで、早く騒動を封じ込めたいという風にしか見えない。学生ファーストで先に残された生徒の処遇の解決を」などと、廃部への反対意見を述べた。
鳥内氏の意見は、今回の日大の廃部の問題点を端的に指摘している。
約120人の部員を抱える団体競技において、3人の逮捕者と1人の書類送検者、そして11人とされる大麻使用を疑われる部員の不祥事で、他の部員全員が連帯責任を負う必要があるのか。そして不可解な廃部への経緯。
日大が30日に文科省に提出した「『学校法人の管理運営に関する適切な対応及び報告(指導)』に対する本法人の今後の対応及び方針」によると、「時間をかけて慎重に審議を重ね、競技スポーツ運営委員会(日本大学競技部を運営及び管理するために設置された委員会)によって廃止(廃部)の方針が承認された」とある。
誰がいつどれだけの時間をかけて何を慎重に審議を重ねたかのプロセスがすっぽりと抜けている。その競技スポーツ運営委員会が、開かれたのが3人目の逮捕者が出た27日の翌日の28日で、しかも、文科省への改善報告書の提出期限が30日。しっかりと、廃部についての一文が、このように報告書に記載されている。
廃部ありきで話が進み、3人目の逮捕が決定打となったのだろう。
日大OBの一人が「臭いモノに蓋をした」と嘆いたが、まさに大学の“存続ファースト”で名門チームの83年の歴史にピリオドが打たれたのである。
また同報告書には、鳥内氏が危惧する残された3年生以下の部員及びスポーツ推薦で来春に入学が決まっている新入生についての“今後”については、こう触れられている。
「また廃止(廃部)に伴い、在学生及び入部希望の新入生に対し、教育的配慮として不利益が生じないよう対策を講じることを継続審議していくことについても承認した」
まったく具体性のない記述だ。関東学連では、他大学へ編入した際にも、日大でのプレー年数を合わせて4年間のプレーが可能なルールが定められている。学力が違うため、一部大学を除き「TOP8」、「BIG8」の大学への編入は難しいとされているが、なんらかのサポートを行う準備はあるのだろうか。
一方でアメフト界以外からは辛辣な意見も出た。アジア最大級の格闘技団体「ONEチャンピオンシップ」と契約している元ONE世界ライト級王者の青木真也が、今回の問題をぶった斬った。忖度など一切ない独自の視点で意見発信し、”モノ言う”格闘家、格闘技界のオピニオンリーダーとして知られるレジェンドが、セージ・ノースカット(米国)と対戦する「ONE165(1月28日・有明アリーナ)」のカード発表会見の後にコメントしたものだ。
「個人的には、あくまでも個人の責任で連帯責任を問う必要はないと思う。大学側は、廃部にすることで、なんにもなしとしたいんだろうけど、(寮内で複数が大麻を使用するなどの)組織的な何かがあれば、いまのご時世だと一度、廃部にしないとダメ。社会は、とりあえずの体として廃部というアクションを起こさないと許してくれない」