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日本初のトランスジェンダーボクサーの真道ゴーが準公式試合で判定で敗れるもライセンス交付に近づくパフォーマンスを披露した(写真・ボクシングモバイル)
日本初のトランスジェンダーボクサーの真道ゴーが準公式試合で判定で敗れるもライセンス交付に近づくパフォーマンスを披露した(写真・ボクシングモバイル)

敗れるも歴史を刻む…「こりゃあかん。男やん。倒されるわ」日本初のトランスジェンダーボクサー真道ゴーの実力を対戦相手とJBCはどう評価したのか?

 日本初となるトランスジェンダーボクサーの真道ゴー(本名・橋本浩、36)が10日、エディオンアリーナ大阪第2競技場でバンタム級3分3ラウンドの準公式試合に挑み、男子プロで5戦2勝1分の石橋克之(35、姫路木下)に0―3判定で敗れた。第3ラウンドにダウンを奪われたが、スピード、コンビネーション、ディフェンス技術では石橋を上回り、足を止めた打ち合いでもパワー負けはしていなかった。試合後、石橋は「パンチはこれまで戦ってきた男子以上。絶対男子プロになれる」と感想を述べ、視察に訪れたJBCの萩原実理事長、安河内剛本部事務局長も試合内容を評価した。JBCでは12月27日の理事会でライセンス交付の可否を審議する方向だ。

 ダウン喫するも立ち上がって打ち合う

 

 真道の挨拶代わりの左フックが男子プロの石橋を真剣にさせた。
「こりゃあかん。男やん。下手したら倒されるわ」
 10月にオファーを受けた石橋は、一度は「何のメリットもない試合。断ろう」と考えたが、ネットで真道が「子供達にカッコいい姿を見せたい」とプロテスト受験を目指す気持ちを語っている理由を見て考えを改めた。 
 石橋も3人の男の子の父親。長男をボクサーにしたいと思い、31歳で子供と一緒に健康目的に姫路木下ジムに入門した。プロテストを受けたのは33歳。その真道の気持ちに共感した。
 だが、ジムには嫌がらせや批判の電話がかかってくるようになった。
「そこまでして目立ちたいか」「元女に勝って嬉しいか」
 それを聞かされ「受けたらあかん試合やったのかな」と気持ちも揺らいだ。
「絶対に負けられない」とのプレッシャーに「ジャブとかで様子を見よう」との甘い考えもあったが、その一撃にそんな迷いはすべて吹っ飛んだという。
 真道のボクシングは拳を交えた一人の男子プロを本気にさせる力があった。
 スピードで圧倒した。高速ジャブに左右のボディを交えてのフック。第1ラウンドに上下のコンビネーションで揺さぶられた石橋は、なす術がなかった。ジャッジの3者が、真道を支持した。第2ラウンドには石橋がプレスをかけてきた。
 真道はロープを背負わされて、左右のパンチを浴びて動きが止まりかけた。
 だが、公式戦と同じ8オンスのグローブで初めて打たれた男子プロのパンチのダメージも想定内だったという。
「女子ボクサーよりもパンチがあるのは当たり前のこと。ガードの上から打たれても利く部分もあった。だけど、『うわあ』という衝撃というよりも『やっぱりこうよな』という納得の感じ。負けているとは思っていない」
 セコンドからの指示は「パワーではなくスピード」だったが、真道は、なんと足を止めて激しい打ち合いに応じたのだ。2人は共に笑っていた。
「駆け引きとかが楽しかった。ついつい前に行っちゃうタイプ。相手も『おまえなかなかやるやかないか』と、言葉でなく拳で伝え合う何かがあった」
 このラウンド、偶然のバッティングで石橋が右目上をカットした。
 第3ラウンドに真道はステップワークを駆使して本来の自分のスタイルでポイントアウトを仕掛けた。ペースもつかむ。だが、「何も考えず無意識に出た」という石橋のカウンターの左フックが顔面をとらえ真道はダウンを喫した。
「取り返そう。逆に倒してやろう」
 すぐさま立ち上がり、足を止めてまた豪快に打ち合った。そこでゴング。1200人で埋まった会場は最高潮。2人は肩を抱き合った。
 ジャッジは3者ともに「29-27」で石橋を支持。真道は0-3判定で敗れた。
 それでも涙はなかった。

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