来年5月に東京ドームで井上尚弥vs“悪童”ネリのビッグマッチが計画されている(写真・山口裕朗)
来年5月に東京ドームで井上尚弥vs“悪童”ネリのビッグマッチが計画されている(写真・山口裕朗)

来年5月に東京ドームで井上尚弥VS“悪童”ネリのビッグマッチ計画

 ネリは日本のボクシングファンから「最も嫌われているボクサー」である。
 元WBC世界バンタム級王者の山中慎介との2度にわたる対戦でドーピング違反問題や確信犯的な体重超過による王座剥奪問題を起こした。今なおJBCはネリの無期限出場停止処分を解除していない。「不正やスポーツマンシップの欠如を嫌う」井上家が忌み嫌い、ずっと拒否反応を示してきたボクサーでもある。
 山中戦後にもバンタム級でまた体重超過の失態を繰り返したネリは、スーパーバンタム級に上げて、2020年9月にWBC世界スーパーバンタム級王座決定戦に勝ち2階級制覇に成功。2021年5月にWBA世界同級王者のブランドン・フィゲロア(米国)と統一戦を行うが、7回KO負けで王座から陥落した。だが、ここ数年は、品行方正な態度で4連勝し、WBCから指名挑戦者として認定された。井上も、もうネリを無視するわけにはいかなくなった。
 井上は「スーパーバンタム級で戦うべき4人」の対戦候補として、タパレス、元3階級制覇王者のジョンリエル・カシメロ(フィリピン)、今日17日に米国で挑戦者決定戦を行う前WBAスーパー&IBF世界同級王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)と共にネリの名前をあげていた。
 カシメロが第1候補だったが、10月に来日して元IBF世界同級王者の小國以載(角海老宝石)と対戦した“井上前哨戦”が、不甲斐ない4回負傷ドローに終わり、候補から脱落。WBCが指名挑戦者として認定したことも手伝い、ネリが、タパレスの次の対戦候補として急浮上していた。
「スーパーバンタム級の今のトップ戦線を見る限り避けられないかなと思う。ファンは楽しみなマッチメイク?そうですね」
 ただ「体重超過は、あれ(許せる)としても、ドーピングはしっかりとして欲しい」と条件を付けることを忘れていなかった。
 我らが井上尚弥が“悪童”ネリに正義の鉄拳を下すーー。5月の東京ドームは、とんでもない熱気と興奮に包まれることは間違いない。
 だが、その前に26日にタパレスとの4団体統一戦という大きな壁が立ちはだかる。40戦37勝(19KO)3敗の豊富なキャリアを持ち、10年前から日本のリングに上がっており、木村隼人、大森将平、勅使河原弘晶を撃破し、岩佐亮佑には敗れているが、タフな日本人キラーとして知られる。
「離れてもよしくっついてよしの器用なボクサー。一発番狂わせを狙ってくるので、そこが一番怖い。気を引き締めていかないと」
 警戒心を抱く井上は過去最多116ラウンドのスパーを積んで準備してきた。
「この先、日本人がたどりつけないところまでいきたい。どこまで強くなれるかを追い求めたい」
 それが井上の求める世界。タパレスを倒して史上2人目となる4団体統一王者となり、来年5月に東京ドームで“悪童ネリ狩り”に挑む。
(文責・本郷陽一/RONPO、スポーツタイムズ通信社)

関連記事一覧