なぜ井上尚弥の父真吾トレーナーはタパレスの勝利自信度「2000%」発言を「オーラもない。尚弥が劣っているものは何もない」と一蹴したのか?
公開練習では、ジャージを着こんだまま、ワンツーを主体にしたシャドーボクシングを1ラウンド行った後、リング内でロープを飛び、グローブをつけてサンドバックを1ラウンド叩いた。力の入れ具合は、おそらく50%程度。体幹の強さやバランスの良さは伝わってきたがフルパワーは見せなかった。
真吾トレーナーは、鋭い目で、その動きを観察していた。
「凄く基本に忠実。体重が大丈夫なら仕上げてはきていると思う。だが、スタイル的には。特に感じるものは全然、なかった。オーラというか、そういうものは感じなかった」
それが第一印象。
「最近の映像を見ると、昔のタパレスとはイメージが違って、攻撃もディフェンスもしっかりしているなとは思ったが、(今日の練習を見て)それ以上でも、それ以下でもない。右のリードから踏み込んでの左のアッパー、左のオーバーハンドを思い切って振ってくる。おそらく左には、自信があるんじゃないか。フルトン戦以上に気を引き締めなければならないが、その一発だけに気をつければ、問題はない。尚弥が集中して、その一発だけ見切ってくれれば、パンチは当たらない。尚弥が劣っているものは、ひとつもない」
真吾トレーナーは、ほとんど何も見せなかったフルトンの公開練習でも「劣っていることは何もない」と分析して、それを井上にそのまま伝えていた。実際、リング上で起きたことは、真吾トレーナーの読み通りだった。
勝負のポイントは「ジャブの差し合い」だという。
「思いのほか右のジャブがいい。リードをしっかりと使ってから左につなげている。そこも想定内だが、差し勝った方がペースを握れる。相手のジャブをもらうことなく、こちらがリードで勝つ。そこが大事」
8回にケリをつけたフルトン戦も1ラウンドの左ジャブの差し合いで勝負があった。今回は、タパレスがサウスポーのため、井上の左ジャブとタパレスの右ジャブの駆け引きになるが、真吾トレーナーは、そこがポイントになることを繰り返し話している。井上も15日の公開練習で「ポイントはジャブ」と明かしていた。
タパレスが2つのベルトを僅差判定で獲得したアフマダリエフ戦では、両者共にボディ攻撃があまり見られない展開だった。
「どの試合もボディが大事。尚弥は得意で自然と出てくるパンチ。よりしつこく削っていく」
タパレスは、ボディワークがうまく、スウェーでパンチを外してくるが、そのディフェンスを崩すには、ボディ攻撃も有効になるだろう。
4年前に岩佐亮佑にTKO負けしたIBF同級暫定王座戦以降は、あまりステップワークは使わずにリングの中央で戦うスタイルに変化している。