「エストラーダを追ってバンタム級に上げることはしない」大晦日決戦を前に井岡一翔が明かしたKO決着とその先にある“野望”
ペレスはデビュー8年目で20勝(18KO)3敗の戦績を持つオーソドックススタイルのファイター。うまくさばかれて判定で敗れたが、来年の1月23日に大阪でユーリ阿久井政悟(倉敷守安)が挑戦するWBA世界フライ級王者のアルテム・ダラキアン(ウクライナ)に3年前に挑んだ世界戦の経験があり、今年に入ってすべてKOで3連勝中。KO率も高く右を振り回してくる好戦的なファイターで、それなりのディフェンス技術もある。パンチ動作がわかりやすいので井岡のスキルをもってすれば負ける相手ではない。英ブックメーカー「ウィリアムヒル」の予想オッズは、井岡勝利が1.04倍で、ペレス勝利が11倍。著しくモチベ―ションが低下した後に、このタイプのボクサーと、楽勝ムードの中で戦う世界戦は危険だ。
番狂わせが起きる条件が揃っている。
しかし、井岡は、それは百も承知。
「過去の例を見て、それが起こりうる試合だとは自分の中でもわかっている。これだけ世界戦の経験をさせてもらって、その次元では戦っていない。そこを通り越してきた。気を引き締めているし、経験してきたからこそ甘くないことがわかっている。モチベーションに振り回されず大晦日に試合ができることに感謝してリングにあがる」
世界戦は、これが25戦目。世界戦21勝は日本人ボクサーとして歴代トップである。そのキャリアが、この試合に潜む罠にはまる危険性などを超えた領域にいるのだと豪語させる。
今日22日に来日するイスマエル・サラストレーナーと同じ門下生でラスベガス合宿での親交があるWBO世界フェザー級王者のロベイシ・ラミレス(キューバ)が、日本時間の10日に同級10位のラファエル・エスピノサ(メキシコ)に判定負けする“番狂わせ”も起きた。
「率直にびっくりした」
自らをラミレスに置き換え、油断を戒める出来事に思えたが、井岡は「彼の試合でより気を引き締めなければとは思っていない」と、これも否定した。
「やっていけば、勝つ時も負ける時もある。勝ち続けるのは難しい…気を引き締めてやっている。残念だが、ここで終わる彼ではない、また頑張って欲しい」
達観の境地。
この大晦日決戦の向こう側には成し遂げたい夢がある。
ただ対戦を熱望するエストラーダ戦の実現の見通しがどうもハッキリしない。エストラーダはWBCの公式サイトにてバンタム級に上げる考えも示唆している。その場合、井岡は自らがバンタム級に上げて追いかけるのか。日本人初の5階級制覇の称号も手にできる。
「はい、そうします」
一瞬ドキっとする発言。そしてすぐにニヤっと笑い「冗談です」と取り消した。
「そこまで考えていないし、そこまでの執着もない。この階級でのプロセスがある相手。彼を追ってバンタム級に上げることはない。(エストラーダは)ひとつの目標であって(対戦できなくてボクサー人生が)終わるわけじゃない。戦い続ける。戦う意味は、そこだけじゃない。色んな人のために戦っているし、未来の日本のためにも戦っている、今はスーパーフライ級で戦うことしか考えていない」
エストラーダがバンタム級に上げても、現階級に留まり戦い続けることを断言した。