井上尚弥ばりの衝撃116秒KOで全日本新人王MVPに輝いたのは18歳の武藤涼太…「名古屋の時代」を開拓した亡き世界王者メーカー松田会長に捧げる勝利
プロボクシングの全日本新人王決定戦が23日、後楽園ホールで11階級にわたって行われ、衝撃の右フック一発で1ラウンド1分56秒にKO勝利してスーパーバンタム級の新人王となった武藤涼太(18、松田)が大会のMVPに輝いた。今月8日に名古屋の“名門”松田ジムを作った松田鉱二会長が81歳で他界。「絶対に新人王になって会長にいい報告をしたい」と臨んだリングだった。なお敢闘賞はスーパーフェザー級の下村佳輝(21、三迫)、技能賞にはフライ級の坂井涼(20「、畑中)が選ばれ、西軍が7勝4敗で勝ち越した。
「いい結果を会長に届けたかった」
18歳のサウスポーはリング上で恩師の遺影を掲げた。
「いい結果を会長に届けたかった」
今月8日に他界した松田会長が、帽子を深くかぶりコーナーから鋭い目を光らせている、ありし日の姿。松田ジムからは、25年ぶりの新人王となった武藤は、今月9日に訃報を聞き、葬式にも参列。「ここで自分が負けたら、次はどれくらい先になるかわからない。絶対に勝つつもりで試合に臨んだ」という。
岐阜中京高から松田ジムの門を叩いたのが昨年9月。プロ入りを決断したとき、「松田ジムしか頭になかった」。
小3から通っていたアマチュアジムの会長が、松田門下生だったためだ。その頃は、まだ松田会長は元気で武藤はジムでアドバイスを受けた。
「少ししかかかわりはなかったのですが、スパーリングを見てもらい『それじゃあ、全然、ダメだぞ』と厳しい言葉をかけてもらったことが心に残っています」
松田会長は、名古屋初の世界王者となった元WBC世界スーパーバンタム級王者の畑中清詞、元WBC世界バンタム級王者の薬師寺保栄らを輩出し「名古屋の時代」を開拓した伝説の会長である。辰吉丈一郎と薬師寺の同王座の統一戦では、帝拳グループに一歩も譲らず入札で興行権を取った気骨の人としても知られる。その人の厳しい助言は「まだまだ努力が足りないんだ」と武藤の心に突き刺さった。
1ラウンド116秒。WBC&WBO世界スーパーバンタム級王者の井上尚弥(大橋)ばりの秒殺だった。勝負を決したのは目にも止まらぬ“消える”フック。
武藤は、右のパンチを見せて左アッパーから右フックの高速コンビネーションで、東日本の決勝で技能賞に輝いていた須藤大和(22、伴流)のテンプルを打ち砕いた。須藤は立ち上がったが、足がよろけてレフェリーが10カウントを聞かせた。
「まったく狙っていないんです。元々はまとめて倒すタイプなんで。KOは一切考えずに、ただ勝つことだけを考えていました。KOを狙うと力が入って変な動きになります。あのパンチは肩に力も入らずに自然と出ました」
その隣で神足トレーナーが「M.Tフックですよ」と謎を明かす。