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衝撃の116秒KOで全日本新人王のMVPを獲得した武藤涼太。8日に他界した松田会長の遺影を掲げた(写真・山口裕朗)
衝撃の116秒KOで全日本新人王のMVPを獲得した武藤涼太。8日に他界した松田会長の遺影を掲げた(写真・山口裕朗)

井上尚弥ばりの衝撃116秒KOで全日本新人王MVPに輝いたのは18歳の武藤涼太…「名古屋の時代」を開拓した亡き世界王者メーカー松田会長に捧げる勝利

 

 神足トレーナーの実弟がプロとして神奈川県の相模原にあるM.Tジムに所属しているため西軍の代表決定戦の前と、今回の試合前に2度、10日間のスパーリング合宿に訪れた。ジムには、2階級制覇王者で、来年2月24日に両国で階級を上げてWBC世界バンタム級王者のアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)に挑む“ネクストモンスター”中谷潤人の姿があった。
 武藤は衝撃を覚えた。
「シャドーからでも集中力していて、普段、見ることができない独特の打ち方をしているんです。フックを打つときに肩甲骨あたりから伸びる感じなんです」
 見よう見まねで盗んだのが、この日の消えたフックだった。
「これまでフックは巻き込んでしか打てなかったですが、それが伸びるようにして打てた。M.Tジムに通わせていただいたおかげです」
  
 小3の頃、テレビで見た元2階級制覇王者の亀田和毅の世界戦に刺激されて、父にお願いしてアマチュアボクシングジムに通うようになった。小6の時に全日本ジュニア王座決定戦で優勝し、中学では2位。岐阜中京高に進み、東京五輪で銅メダルを獲得した田中亮明氏の指導を受けて、2年の選抜大会で3位に入った。だが、3年の最後の全国大会となるインターハイでは5位に終わっている。
「小学生をピークにどんどん成績が落ちていくんです(笑)。ここから登っていきたい」
 V字回復は、松田ジムに入門し、プロ入りを決めてから。これで6戦5勝(3KO)1分けとなり、大会のMVPに選ばれた。
「嬉しいです。今後のことは、この試合が終わってから考えようと思っていました。どんどん強くなりたいし、将来的には、世界チャンピオンになりたい。でも何年後とかを考えずに徐々に上へ行けばいいと思っています。まずはユース王者から」
 現在は、兄が経営する解体業の現場仕事を手伝いながら生計を立てている。
 理想とするボクサーはユーチューブで見た元2階級制覇王者の畑山隆則。今頃の若手ボクサーの定番の井上尚弥ではない。

「あの打ち合いが大好きでずっと憧れています」
 その畑山氏が、自らがGMを務めるジムからの初の新人王誕生となった西畑直哉(T&H)のセコンドにつくため、目の前を通り過ぎた。
「え?そうなんですか?気がつかなかった」
 将来が楽しみな豊かな才能を示したボクサーは、その時ばかりは18歳の幼い表情に戻っていた。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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