なぜ井上尚弥はタパレスをKOするのに手を焼いたのか…来年5月に東京ドームで“悪童”ネリとのビッグマッチ計画
プロボクシングのスーパーバンタム級4団体統一戦が26日、東京江東区の有明アリーナで行われ、WBC&WBO世界同級王者の井上尚弥(30、大橋)がWBAスーパー&IBF世界同級王者のマーロン・タパレス(31、フィリピン)を10ラウンド1分2秒KOで下して史上2人目となる2階級4団体制覇の偉業を成し遂げた。4ラウンドに最初のダウンを奪った井上は、タパレスの巧みなディフェンスとタフネスぶりに手を焼いたが10ラウンドに、右ストレートをガードもろともテンプルにぶちこむとフィリピン人が崩れ落ちた。来年5月には東京ドームで元2階級制覇王者でWBCの指名挑戦者である“悪童”ルイス・ネリ(29、メキシコ)とのビッグマッチが計画されている。
すべてを表すパッキャオからのメッセージ
クライマックスは突然訪れた。
なにしろパンチを放った井上が「びっくりした」という。
10ラウンド。井上が、一度、ワンツーを放ち、再度、ワンツーを試みると、その右ストレートがガードを固めていたグローブごとタパレスのテンプルを直撃。ロープに背中から弾き飛ばされた2団体王者は、両膝から崩れて落ちて両手をついた。左膝を立てなんとか立ち上ろうと踏ん張るが右足が出てこない。レフェリーは10カウントを聞かせた。
「手ごたえは正直なかった。これだけダメージ蓄積されていたんだと。ポーカーフェイスで苦しい表情を見せない。そこまで読み取ることができなかった」
だが、試合後、タパレスは「そんなにパンチは打たれていない。ボディは打たれたけど今は大丈夫だ。非常にいいパンチが決まったことが原因だと思う」と、ダメージの蓄積ではなく、その一撃の衝撃だったと明かしている。
コーナーに駆け上がって喜びを表現した井上の表情は険しかった。
「達成感もあり、嬉しいが、通過点としてとらえた一戦なので、今日の嬉しさを少し噛みしめながら過ごして、また次戦に向けて頑張っていきたい」
ラウンド間のインターバルでモンスターが嘆いた、
「パンチを当てづらい」
4ラウンドに、みぞおち、脇腹、レバーと、たらふくボディにパンチを食らわせておいて左フックが顎をとらえた。タパレスの動きが止まると、左、右、左の嵐のようなトリプルフック。たまらずタパレスは、両ひざ、両手をついてダウンした。
だが、ニヤッと不敵に笑い立ち上がってきた。
1万5000人で埋まった有明アリーナはフィリピンから来た勇敢なファイターへの拍手で包まれた。残り時間がなくフィニッシュに持ち込むことができなかったが、井上は、続く5ラウンドに強打を打ち込み勝負に出た。だが、後ろ重心のショルダーブロックと上体をそらすボディワークで、モンスターの直撃弾を間一髪でかわす。パンチの芯をほんの少しずらされクリーンヒットが決まらない。そして何よりフィリピン人はタフだった。アッパー、フックの逆襲も受けた。
「過大評価していたタパレスの攻撃力の部分は、想定していた通り。だが、ディフェンス面が思ったより凄くて意外とパンチを当てられなかった」
真吾トレーナーは、アドバイスを送った。
「体で受けて打ち合うより、打ち終わりを狙っていい。慌てなくていいよ。コツコツ、ジリジリいってダメージを与えればいいよ」