「井上尚弥のスタイルで井岡一翔からベルトを奪う」大晦日決戦でWBA王者の井岡に挑戦するペレスが“世紀の番狂わせ”を豪語した根拠と暴露した弱点とは?
カバジェロ・トレーナーも「彼が言ったように井岡は左がいい。経験があるので引き出しも多い」と分析した上で、「34歳という年齢が弱点になる、バックステップ(に頼りすぎる)部分も短所だ」とズバリ弱点を口にした。
「前に出てくるよりも距離を取りたがる。それが彼のスタイルだろう」
円熟味を増している井岡の左ジャブを軸にした出入りのボクシングをぐちゃぐちゃの打撃戦に巻き込んで潰してしまおうというのである。
ペレスは、「そのためにはコンビネーションブローを賢く使うこと。上体、足を動かすことが必要だ」とまで、手の内をさらけ出した。
ペレスは、12歳でボクシングを始め、アマチュアで130戦110勝、国内大会で3度優勝する実績を残して2016年にプロデビュー。ここまで23戦20勝(18KO)3敗の戦績で、2020年にはWBA世界フライ級王者のアラテム・ダラキアン(ウクライナ)に世界挑戦して0―3判定で敗れているが、KO率は90%を誇る。
「相手の心を折るまで連打するときもあるが、一発で仕留めるが理想だ」
得意なパンチは左フックでニックネームはアバランチェ(雪崩)。止まらない雪崩のように前進を続けるファイトスタイルから付いた異名だという。
怒涛のプレスで、井岡を追い詰める算段なのだろうが、ここ5試合KO決着のない井岡は「KOをお見せしたいという気持ちが強い」と宣言している。前に出てくれば、KOにつなげるカウンターを狙うには、おあつらえ向きの展開。それでもペレス陣営が、作戦のすべてを明かしたのには、それを上回る自信があるのだろう。
実は、エルモシージョのジムでは、エストラーダと、三浦隆司と対戦経験もある元WBC世界スーパーフェザー級王者のミゲール・ベルチェルトが練習をしていて「おまえなら井岡に勝てる」という“お墨付き”をもらってきた。
そのエストラーダからは「(一発を)狙っていけ」「常に(前に出て)追いかけろ」「クレバーに戦え」と3つのアドバイスをもらったという。
そして“打倒井岡”を果たすために追い求めているスタイルが、2日前に2階級4団体統一王者となる偉業をやってのけた、あのモンスターであることを明かした。
井上が、WBAスーパー&IBF世界同級王者のマーロン・タパレス(フィリピン)を10回にKOした26日は運悪くメキシコから日本へ移動する機上にいた。
「機上にいたのでリアルタイムで見れなかったんだけど、彼の大ファンなんだ。(2階級4団体統一を)うれしく思う」
井上との対戦を熱望するボクサーは世界中で後を絶たないが、2階級下で対戦する可能性のほぼないペレスは、逆に「井上ファン」を公表した。
「彼のボクシングスタイルが凄く好きなんだ。自分のボクシングスタイルも井上に似ていると思うんだ」
まだ荒っぽく完成度の低いペレスのボクシングが、井上のスタイルに似ているとは、とうてい思わないが、アマチュア経験をベースにした部分と、その高いKO率をモンスターに重ね合わせているのかもしれない。
「もちろん今も井上のボクシングを参考にしている」
常に好戦的でありながら瞬時に情報を収集して決して被弾するこどなく、クレバーに頭を使い、対戦相手のボクシングを壊してチャンスを逃さず驚異的な一撃で仕留める。誰も真似のできない井上尚弥のボクシングを追い求めている。
その井上スタイルで井岡から王座を奪う“奇跡”を起こそうというのである。
「井上は本当に凄いボクサーだ。世界の伝説を作っていると思う。おそらく、このままライト級までいくんじゃないか」
ペレスは、現在スーパーバンタム級の井上が3階級上まで制すると予想した。そうなれば、前人未到の7階級制覇である。
英国の大手ブックメーカー「ウイリアムヒル」のオッズでは、井岡勝利が1.05倍で限りなく、元返しに近く、ペレス勝利が10倍。予想のプロは井上ーペレス戦よりも高い確率で井岡の圧勝を支持している。“無印”でアンダードック的な立場のペレスが井上のように戦うことができれば、まさに“世紀の番狂わせ”となるのだが…。大晦日にベネズエラ人は理想と現実の違いをまざまざと見せつけられることになるのかもしれない。