なぜ井岡一翔は井上尚弥が偉業を達成したタパレス戦を見なかったのか…モンスターに並ばれた世界戦最多勝利記録「21」の更新にも執着せず
3日前に世界に衝撃を与える出来事が有明アリーナで起きた。井上が10回KOで史上2人目となる2階級4団体統一を成し遂げた。世界戦「21」勝目。井岡が保持していた日本人ボクサーの世界戦最多勝利記録に並ばれた。ちなみに世界の最多記録は、“レジェンド”フリオ・セサール・チャベス(メキシコ)の「31」である
「試合は見てない。もちろん結果は知っている」
井岡は、この会見で「集中している」というワードを使った。“怪物”井上の戦いから受ける刺激よりも目の前の大晦日決戦に向けるベクトルを優先した。
井岡は、これまでも井上と比較される声に対して「自分には自分の追い求めるボクシングがあり、ファンへの伝え方がある」という話をしていた。
だが、統一戦を熱望してきた井岡は、井上の偉業が、いかに凄いことかを最も理解しているボクサーでもある。心から敬意を表した。
「率直に言って素晴らしい。できることではない。だからこそ今まで4団体統一チャンピオンとか、そういった選手はいなかった。それを2階級でやったことは素晴らしいことだ」
最多記録に並ばれたことへの特別な感情も持たなかった。
「今、世界戦の勝利数で並ばれたということも、特に何も気にしていなくて1戦、1戦、次の試合が、大事な試合。リングに上がる以上、負けられないし、結果として勝利すれば、また世界戦の勝利数もひとつ増える。それは自然の流れというか、やっていくなかで自然と残されていく記録だと思う。特に(記録に)とらわれず、気にせずに、これからもやっていく試合を大事に、自分たちがやるべきことを淡々とこなしていけば、結果として勝利を味わうことになるし、それを感じたい。特に記録に執着するつもりはない」
それが井岡がぶれずに貫いてきた独自哲学である。
大晦日決戦に勝てば、再び世界戦最多勝利を更新し単独トップとなる。
写真撮影で行われたフェイスオフは、距離をとっての15秒。司会者の呼びかけで2人は目を離したが、井岡は握手もせずにピリピリ感を漂わせた。
「この1戦は大事な試合。できればkO勝利をお見せしたい」
12度目の大晦日決戦に残り1日だ。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)