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大阪女子マラソンで前田穂南(天満屋)が19年ぶりに日本記録を更新。3枚目のパリ五輪チケットをほぼ確実にした(写真:西村尚己/アフロスポーツ)
大阪女子マラソンで前田穂南(天満屋)が19年ぶりに日本記録を更新。3枚目のパリ五輪チケットをほぼ確実にした(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

衝撃の2時間18分59秒!なぜ前田穂南は伝説の女子マラソンランナーが持つ日本記録を19年ぶりに更新することができたのか?

 家族やチームメイトのバックアップも力になった。32キロすぎにはピンクの服を着た父・哲宏さん(50)が併走する形に。その場面がテレビで映し出され、ネットでも話題になった。そんな哲宏さんは、大の阪神ファン。前田の「アレ」も父の影響を受けたもの。「父の走っている姿が見え、頑張ろうと思った」と笑った。
 合計3枠あるパリ五輪女子代表を巡っては昨年10月のMGCで優勝した鈴木優花(第一生命グループ)と2位の一山麻緒(資生堂)が決定済み。残りの敗者復活レースは、3月の名古屋ウィメンズを残すのみ。逆転するには、前田が出した日本記録をさらに更新する必要がある。この日、同日開催されていた女子ハーフマラソンで日本女子選手の大会記録を1秒以上更新する1時間8分18秒で優勝した安藤友香(ワコール)らが出場を予定しているが、前田の記録を破るのは容易ではないだろう。
 前田の日本記録更新は、1992年バルセロナ五輪での有森裕子さんの銀メダル、1996年アトランタ五輪での銅メダル、2000年シドニー五輪での高橋尚子さんの金メダル、2004年アテネ五輪の野口さんの金メダルと10年にわたってメダルをつなぎ築いてきた日本女子マラソン黄金時代の復活への号令となるのだろうか。スピードレースの海外でも、大勢のペースメーカーに先導されての記録でもなく、国内の女子単独レースで成し遂げた点に価値がある。日本陸上競技連盟の瀬古利彦ロードランニングコミッションリーダーは「何も言えねぇ、ブラボーなレースでした。“アレ”してくれて良かったです。大阪、来たんでギャグも言わないと」と上機嫌。真顔になって「日本の歴史を変えてくれて本当にうれしかったです。マラソン女子が階段を上り始めた」と絶賛した。
 かつて男子マラソンの日本記録を保持していた高岡寿成シニアディレクターは「男子の力を借りられる混合ではない女子単独のレース。タイム以上の価値がある」と高く評価した。
 現在の女子マラソン界は、アフリカ勢、特にエチオピアの台頭が目覚ましい。昨年の世界20傑中、12人がエチオピア勢である。自己ベストタイ記録で優勝して前田に勝ったエデサは、エチオピア国内では中堅レベルの選手。「前田選手の飛び出しは予想外だったが、ありがたかったし、30キロぐらいで追いつけると思っていた」とサラリと言ってのけた。昨年は9月のベルリンでティギスト・アセファがこれまでの世界記録を2分以上も更新する2時間11分53秒という驚異的なタイムでフィニッシュしスピード化が急速に進み、世界との差は広がるばかりだった。そんな中で前田が出した記録は世界のトップに肩を並べるまでとはいかないが、そのトップ集団の最後尾あたりに顔を出すまでにはなったと言っていい。瀬古リーダーは「記録は出るときはどんどん出ちゃうもの。かつて男子のマラソンがそうだった」との期待を口にしている。前田はまだ発展途上。パリ五輪が日本の女子マラソン黄金時代の復活への序章となる可能性も否定できない
「やっぱり走るのは楽しい。代表に決まったわけではないので、いまは待つのみ」
 歴史の壁を破った前田の次の目標は「アレのアレ」なのだろう。

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