本当に「浅い」パリ五輪競泳会場は「低速プール」なのか…いまだ世界記録はひとつ…海外研究者の仮説には選手心理の影響も
またリオ五輪では、「一部の選手は50メートルの往路と復路でスピード差を感じたことがある」との証言があった
統計分析により、レーンによるパフォーマンスの違いを特定することができたが、プールの物理的特性を測定していないため、「レーンによる偏りが水流やその他の要因によるものなのかは断言できない」という。
また学術的な厳密さとジャーナリズムの融合を謳うメディア「ザ・カンバセーション」では、ニュー・サウス・ウェールズ大学シドニー校のシェーン・キーティング准教授が分析した記事を掲載した。
プールの浅さが記録に影響を与えているかどうかの問題については、「波の一部は下に向かって進み、プールの底で、跳ね返ってから再び表面に戻り、乱流を引き起こす。プール表面の波は、水泳選手のリズムを乱し、速度を低下させる原因になる。しかし、これは、科学的観点から見て、いくつかの問題点ある」とし、水深の問題だけが、「低速プール」の理由ではないと説明。
「もしかしたら、パリは記録の出にくいプールなんだという認識が選手の心理面に影響を与えたかもしれない」との仮説を立てた。
そしてパリ五輪のプールが「低速プール」と呼ばれる理由としては、競泳の世界に おいての記録更新が停滞期に入っている可能性を示唆した。
「記録は次々と塗り替えられるたびに優れたパフォーマンスが生まれる可能性は低くなる。記録更新のペースが、時とともに遅くなることは、驚きではない。例えばマラソンでは、1950年代から60年代にかけて男子の世界記録が12分縮まったが、それ以降の進歩は緩やかで、8分縮まっただけで、まだ2時間というラインを超えられずにいる」
マラソンの世界記録は昨年の10月のシカゴマラソンでケニアの故・ケルビン・キプタムが叩きだした2時間0分35秒。2時間切りは目の前に迫っているが、マラソンの記録の変遷を例に出して、競泳の世界記録更新が少ない理由が、停滞期にあるのではないかという可能性を示唆した。
「低速プール」で最終的には、いくつの世界記録が飛び出すのだろうか。競泳は8月5日が最終日だ 。