「井上尚弥よりも先に引退するので最多勝記録は彼が抜く。こだわりはない」なぜ井岡一翔は大晦日にKO勝利を有言実行できたのか…語り尽くした究極技術論と2024年の戦い
フライ級の2団体統一王者となった元WBC世界スーパーフライ級王者でもあるジェシー・ロドリゲス(米国)が、エストラーダとの対戦を熱望。エストラーダ自身もバンタム級転向を口にしており、実際、来年2月にはノンタイトル戦をバンタム級で戦う。しかし、井岡陣営は、それをバンタム級転向への布石とは見ていない。井岡も「バンタム級までは追いかけない。そこまでの執着はない」とコメントしている。WBAは挑戦者決定戦を行いジョン・ラミレス(米国)が指名挑戦権を得た。WBAは統一戦を優先するので、5月をメドに交渉しているエストラーダ戦が決まれば問題はないが、井岡も「指名試合も出でくるだろうし、自分がいきたい方向性だけの選択肢ではなくなってくる。まずは、現役を続ける以上、このWBAの王者であり続けること」という話をした。
エストラーダ戦が実現せずとも井岡が目標を失うことはない。
「挑戦し続ける者だけが見えるところを見たいし(ファンに)見せたい」
ーー大晦日の井岡をいつまで見られるのか?
筆者が、そう問うと「前までは、何回やったら(引退)…と思っていた。でも(大晦日のリングで戦う)チケットを持っていて、世界戦のリングがあるのなら選択肢として戦い続ける。13、14(回)といけるところまでやりたい」と答えた。
今回はTBSではなく、ABEMAがライブ配信したが、KO防衛という最高の結末だったため、速報値での視聴数は、過去のABEMAのボクシング中継では最高の数字を叩きだしたという。ABEMAの関係者は「来年の大晦日もぜひうちでやらせてもらいたい」と井岡の世界戦を継続的にバックアップしていく考えを明かした。井岡がベルトを保持していれば、13回目、14回目の大晦日決戦も実現する。
34歳でKO勝利を見せつけた。
「34歳で衰えたなとは正直感じない」
科学的なフィジカルトレーニングに加えて、ピラティスを取り入れ、丹念なケアを心掛けている。栄養学を学び、魚を中心とした食事から肉を中心とした食事に変え、今回はバランスにこだわるなど、自らの肉体を実験台にしながら、ここでも維持ではなく進化を求め続けてきた。
「ただ練習しているだけじゃない。バランスが取れているから、長くできている」という自負がある。14回目の大晦日を迎える時には36歳。米メディアが「世界最高選手の一人」と評した井岡なら、また有言実行してしまいそうである。
会見の最後に井岡は「会見のスタートが遅くなってすみません」と報道陣に頭を下げた。奢らぬチャンピオン。だから井岡は負けない。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)