井上尚弥が大谷翔平の7億ドル(約994億円)を超える日は来るのか…5月に東京ドームで“悪童”ネリ戦、年内サウジ興行のプラン
米国ボクシング界の高額ファイトマネーの原資はPPV(有料放送)だ。契約件数に応じて歩合で選手に分配される。過去最高額は2015年に行われたメイウェザー対マニー・パッキャオ(フィリピン)の“世紀の一戦”で売り上げは4億ドル(約568億円)を超えたとされている。ただ現在はHBOがボクシング中継から撤退、昨年12月を最後にショータイムも手を引くなどマーケットに異常が発生している。
だが、対照的に日本は、井上の試合を配信しているNTTdocomoの「Lemino」、今月23日、来月24日と立て続けにWBA&WBC世界ライトフライ級王者、寺地拳四朗(BMB)、那須川天心(帝拳)、WBA世界バンタム級王者、井上拓真(大橋)らのビッグマッチを配信する「アマゾンプライムビデオ」などが好調で軽量級では世界でトップクラスのファイトマネーが捻出されるようになっている。次から次へと強豪が井上の首を狙ってくるのは、そのためだ。
「Lemino」「アマゾンプライムビデオ」は、サブスクで、ここまでビッグマッチを無料配信しているが、今後、PPVにシフトする可能性もあり、そうなれば、現段階で数億円規模の井上のファイトマネーは一気に跳ね上がるだろう。
今年はさらに夢のあるプランが練られている。5月には東京ドームで、元WBC世界バンタム級王者、山中慎介氏との2度にわたる戦いで、ドーピング疑惑、体重超過を犯して大バッシングを浴びた“悪童”ネリと対戦する計画が練られている。そして年内には、サウジアラビアで防衛戦を開催する可能性もある。
プロモート契約を結んでいるトップランク社の最高トップ、ボブ・アラム氏がタパレス戦を視察するために来日。「エンターテイメント部の一番偉い人からサウジでも井上の試合ができないかという話をいただいた。メインイベンターとして呼びたがっている。ファイトマネーは凄いことになるだろう」と明かした。
サウジアラビアは、オイルマネーをバックに国家事業としてボクシングのメガファイトを誘致しており、昨年も10月にWBC世界ヘビー級王者、タイソン・フューリー(英国)と元UFC王者のフランシス・ガヌー(カメルーン)の異色ファイトを実現し、2月17日にはフューリーとWB&IBF&WBO同級王者のオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)の4団体統一戦が予定されており、2人のファイトマネーは合わせて1億ドル(約142億円)を突破するという。
ヘビー級と軽量級ではファイトマネーに差は出てくるが、関係者の一人は「サウジ開催となるとゼロが一つ違ってくる」と語っていた。そうなれば井上には最低でも10億円以上のファイトマネーが約束されるだろう。
井上は「2024年は3試合やりたい」との構想も明かしていた。
今すぐに大谷の年俸換算の7000万ドル(約99億円)は超えられないかもしれないが、井上が勝ち続ければ、ファイトマネーも記録破りの数字に到達することは間違いない。かつて井上は「ファイトマネーという部分でも夢のある存在になりたい」という目標を口にしていた。井上が大谷を超える日がいつかやってくるのかもしれない。決して新春の初夢ではない。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)