引退した元ソフトバンク、巨人の“熱男”松田宣浩氏は将来指導者としてどこのユニホームを着たいのか?
ユニホームを脱いだ今だからこそできる、チャレンジの向こう側に見据えているのが、指導者の道だ。将来の「松田監督」の実現である。
「まずは野球を勉強する。(監督、コーチといったものは)相手からのお話をもらって成立するもので、僕からなりたいと言ってなれるものではない。それが、いつになるかわからないが、野球に育ててもらった。人生の大半を過ごした野球界にいつか恩返ししたいし、その気持ちを心の片隅にいつも持ちながら野球をみたい。いつか野球界の後輩たちと一緒に勝つ喜びを味わいたいと思っています」
ソフトバンクでは、小久保監督が2軍監督から今季から1軍で指揮を執る。巨人の阿部監督も2軍監督から1軍ベンチを経験して今季から1軍監督だ。阪神を18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に導いた岡田監督も2軍監督を経験しており、「2軍監督をやったことが上(1軍)で監督をやる上ですごく生きた」という話をしていた。松田氏も、将来的に監督を目指すのであれば、その2軍監督→1軍監督の王道を歩むのがベストだろう。
松田氏には、2軍監督の理想像がある。それは亜大からドラフトの希望枠でソフトバンク入団し、開幕スタメンに抜擢されるものの約2か月でプロの壁にぶつかりファームに落ちた松田をプロで通用する形に鍛えあげてくれた秋山幸二氏だ。
「理想の2軍監督は秋山さんなんです。2軍監督から1軍のヘッドコーチをやって1軍監督になられたんですが、引退して時間が経っていなかったので、まだバリバリで、実際、目の前で打って見本、実技を見せてくれるんです。今の若い選手は、それがユーチューブなんでしょうけど、すごくわかりやすくて指導者としても格好良かった」
ファームでも遠征があったが、ファンの注目を浴びてサインを求められるのは秋山氏だったという。「僕らは子分みたいな感じで、どっちが選手かわからなかった(笑)」との印象が今でも残っている。
プロ野球界では名前のあるベテラン選手ほど、晩節に球団とトラブルを起こし指導者の資質を疑われ、その評価を下げる人も少なくない。だが、松田氏は、ソフトバンクへの恨み節のひとつ残すことなく退団して巨人に移籍。そのほとんどをファームで過ごすことになったが、腐ることなく、若手以上にベンチで声を出して、ハッスルプレーを続け、ドラフト1位の浅野らに慕われた。
「1軍も2軍もプロ野球は一緒。ユニホームを着ている以上、同じ温度で野球をやらねばならないと思っていた。脚光を浴びる1軍では、がむしゃらにやって、2軍に落ちたら腐るという姿勢は、僕の生き様の中になかった。だから、逆に2軍のレギュラーが1軍に行って控えでチャンスを待つのは当たり前なんだから、臆せず同じように声を出して欲しいんだよね」
松田氏は、その信念を貫き、巨人の若手に伝えた。