なぜ“未完のスケーター”本田真凜は22歳で引退を決めたのか…今後彼女が向かう先は女優ではなく…
試合当日にめまいで倒れ、全日本選手権を棄権した本田は兄の姿に心を打たれた。
「お兄ちゃんが引退した年、いまの私と同じ歳になったときに、最後の試合を最高の笑顔でやりきったのを見て、私もここまでやりたいと思いました。それ(大学4年)までは絶対に全日本選手権に出場し続けると、そのときに誓いました」
昨年末の全日本選手権。右骨盤を痛めながらも必死に調整して出場したのは、最後の舞台にすると決めていたからに他ならない。しかし、怪我の影響で精彩を欠いた本田はショートプログラムで最下位の28位となり、上位24人によるフリーへ進めなかった。
それでも悔いはなかった。演技後には感極まったように両手で顔を覆い、次の瞬間、右手でそっと氷面を触った。別れを告げるような仕草に込めた思いも会見で問われた。
「全日本選手権の舞台は自分のなかではやはり特別で、ジュニアから上がって、全日本への出場資格が初めて満たされた年から9年間、全日本の舞台にはすべてたどり着けました。それが自分をほめたいというか、誇らしく思えています。なので、これで最後なんだな、とかみしめた瞬間でしたし、すごく幸せな瞬間だったと思っています」
会見では交際を公言している世界王者、宇野昌磨(26、トヨタ自動車)に関して「その後も順調でしょうか」とも問われた。ちょっぴり照れながら「は、はい」とうなずいた本田は、さらに「宇野選手に限らず――」と感謝の言葉を紡いでいる。
「長く一緒にフィギュアスケートをしてきた選手たちは、小学生のときから一緒に頑張ってきた仲間でもあります。なので、まるで幼なじみのような感覚で、私が今シーズンで最後になるとみんな知っていました。最後は自分の状態がよくなかったですけど、いろいろな支えがあったからこそスケートが大好きなまま、引退までたどり着けたと思っています」
さまざまな選手、関係者からねぎらいの言葉をかけられた。そのなかでも憧れの女性であり、憧れ続けたスケーターでもある浅田真央さん(33)の存在に常に勇気づけられてきた。最後の全日本選手権を終えた直後にも、浅田さんからメッセージが届いた。
「一言一句、間違えずに言えるくらい覚えているんですけど、それは自分のなかで秘密にできたらいいなというのがあって……」
自分だけの宝物にしたいと苦笑した本田は、メッセージの一部をこう明かす。
「『小さなころから逃げずに、最後まで頑張ってきた真凜はすごくえらいよ』と言っていただけて。さらに『新しいスタートでも胸を張って、思い切り進んでいけばいいよ』といった言葉もかけていただきました。私がつらいときに何かを察して、こちらから連絡をしなくても私の心に響く、本当に素敵な言葉をかけてくださるのが浅田真央さんなんです」