なぜ“未完のスケーター”本田真凜は22歳で引退を決めたのか…今後彼女が向かう先は女優ではなく…
浅田さんの言葉にも背中を押され、歩んでいく今後で本田は何を目指すのか。競技者ではなくなるものの、愛してやまないフィギュアスケートに別れを告げるつもりはない。さらに「プロ」の肩書きをつけて、真骨頂でもある魅せる演技を追求していくと本田は言う。
「かっこよく言えば、物心がついたときからスケートは自分の一部という感じでした。他にも好きなことがたくさんありますし、チャンスがあればいろいろなことに全力で挑戦してきたいと思っていますけど、そのなかでもスケートを滑っているときの自分が、自分のなかでは一番輝けていると感じています。競技の場からは離れても、もっとみなさんに楽しんでもらえるような演技ができるスケーターになっていけたらいいなと思います」
兄の太一さんを本田が目標に定めたように、2人の妹、望結(19)と紗来(16)も本田の背中を追いかけてきた。望結と紗来はフィギュアスケーターであるとともに女優やタレントとしても活動し、大手芸能事務所に所属している。
本田も以前は同じ芸能事務所に所属していたが、いま現在は浅田さんと同じ、アスリートの各種活動を対象にしたマネジメント会社に移っている。それでも会見では「引退を機に、妹さんたちと同じ芸能活動をされる可能性はあるのでしょうか」と問われた。
本田は、あくまでもメインはフィギュアスケートだとと答えている。
「私はフィギュアスケートが本当に大好きなので、可能な限り今後も滑り続けていきたい。年が明けてからすでに練習を再開していて、体の状態を見ながら本当に少しずつですけど、ジャンプの練習も始めたところです」
シニア転向後は思うような結果を残せなかった。本田自身も「順風満帆という感じには見えなかった」と認めながら、ノービスやジュニア時代よりも「いま現在の方が、スケートが大好きです」と力を込める。さまざまなプレッシャーや葛藤を乗り越えながら、育まれてきたフィギュアスケートへの愛情は、プロの道を歩み始める本田を力強く支えていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)