• HOME
  • 記事
  • 格闘技
  • ボクシング“不毛の地”岡山から世界王者は誕生するのか…1.23大阪でユーリ阿久井と苦節37年の守安会長が挑む世界ベルト
WBAフライ級王座に挑戦するユーリ阿久井(写真・山口裕朗)
WBAフライ級王座に挑戦するユーリ阿久井(写真・山口裕朗)

ボクシング“不毛の地”岡山から世界王者は誕生するのか…1.23大阪でユーリ阿久井と苦節37年の守安会長が挑む世界ベルト

 プロボクシングのWBA世界フライ級王者のアルテム・ダラキアン(36、ウクライナ)に23日に大阪で挑戦する同級1位のユーリ阿久井政悟(28、倉敷守安)が11日、都内の帝拳ジムでスパーリングを公開した。37年前に“ボクシング不毛の地”岡山にジムを創設した守安竜也会長(70)にとってウルフ時光以来、23年ぶり3度目の世界挑戦。最盛期に比べてジム生が半分に減っている寂しい現実を前に「ユーリが世界を獲れば岡山のボクシング界が活気づく」と思いを寄せユーリも「何が何でも勝つ」と必勝を誓った。

 岡山での世界戦構想

「ユーリ」のリングネームは、ボクシングファンなら知らない人はいない、あのWBC世界フライ級王座を9度防衛した“輸入ボクサー”勇利アルバチャコフから拝借した。阿久井自身が知人から顔が似ていると言われ、バッタバッタと倒すボクシングスタイルも好きだったため、その話を聞きつけた守安会長がプロ入りと同時に命名した。勇利が所属していた当時の協栄ジム会長だった金平桂一郎氏に連絡をとり許可をもらった。
 守安会長は「これと思った選手にだけリングネームを付けるんですわ。覚えてもらいやすいでしょう」と裏事情を説明した。
 「岡山から世界王者を」
 元日本王者でもある守安会長が、過去に一人も岡山のジムからは世界王者を輩出できていないボクシング“不毛の地”の岡山倉敷にジムを立てたのが1987年。その間、ウルフと名付けたのが、元OPBF東洋太平洋ミニマム級王者だったウルフ時光である。1999年と2001年に2度、世界挑戦したが、いずれもTKO負け。悲願達成はならず2人目の世界挑戦を実現するまで実に23年の歳月を数えた。
「ウルフの時は、実力的には難しいかなと思って世界戦のリングに送り出したけど、今回は自信が全然違う。何が何でも獲らないけん」
 その間、ジムの会員や練習生は、徐々に減り、岡山出身の元WBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎の登場やテレビ番組「ガチンコファイトクラブ」が話題となった最盛期には120、130人いた会員が、現在は70人前後。関東圏内では、2階級4団体統一王者、井上尚弥(大橋)の効果で、徐々にジムの会員が増え、プロテスト受験者もコロナ前以上に回復しているが、「私ら田舎にまでは井上選手の効果が来てないんですわあ」と嘆く。「桃太郎ファイト」と銘打った地元の興行もコロナ禍の影響もあり開催できなくなった。
「やる度に赤字でね。今の状況では難しい。でもユーリが世界を獲ってくれれば、 岡山のボクシング界も活気づく。本田会長にチャンスを作ってもらったので、世界を取ってなんとか恩を返したい。ユーリが防衛を続けて、いつか岡山で世界戦ができれば」
 岡山で世界戦開催の夢構想を抱く。両国からエディオンアリーナ大阪に場所が変わったことで約200人ほどの応援団が岡山からかけつける予定だという。
ユーリも地元岡山の期待を十分に感じている。
「岡山で過去に世界挑戦したジムの先輩の姿を見てきて、自分がここで必ず獲らなきゃと思っています」
 そして「そんなこと(地方のジムの問題)関係ないんだというのを証明したい」とまで言い切った。

 

ジム創設37年になる守安会長とユーリ阿久井(写真・山口裕朗)

 

関連記事一覧