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西武がFA山川穂高の人的補償としてソフトバンクから指名したのは侍ジャパンにも選出されたことのある甲斐央(写真:Penta Press/アフロ)
西武がFA山川穂高の人的補償としてソフトバンクから指名したのは侍ジャパンにも選出されたことのある甲斐央(写真:Penta Press/アフロ)

FAの人的補償は本当に「悪魔のシステム」なのか…和田毅が浮上して甲斐野で決着した西武とソフトバンクの“人的補償騒動”の波紋

 西武がFAでソフトバンクへ移籍した山川穂高(32)の人的補償に甲斐野央(27)を指名した問題の波紋が止まらない。“大人の事情”で当初指名する予定だった和田毅(42)から方向転換した可能性が浮上したためだ。真相は藪の中だが、それらが事実であれば、FA制度の根幹さえ揺るがす大問題。SNS上では人的補償の見直しが議論されている。

 「最悪の前例」

 一件落着とはいかなかった。西武が11日午後5時30分に山川の人的補償としてソフトバンクの甲斐野を指名したことを発表。甲斐野、西武の渡辺久信GMらが公式コメントを出したが、その朝に日刊スポーツが「和田が人的補償」という幻のスクープを打っていたため両球団のファンだけでなく、球界を巻き込んでの大騒動となった。真相は藪の中だが、「和田が移籍を拒否した」「ソフトバンクがファンの反発に驚いて西武に変更をお願いした」などの様々な情報が飛び交い、SNSやネット上での余波が収まらない。もし、これらの情報が事実で、ソフトバンクが泣きつき、西武が“大人の対応“で指名選手を和田から甲斐野に方向転換していたとすれば、FA制度の根幹を揺るがす大問題である。
 元千葉ロッテの“モノ言う”評論家の里崎智也氏は「和田が打診を拒否したなどの報道が事実であればという推測を前提に話せば」との注釈付きで、この問題に斬りこんだ。
「もし和田がプロテクトから外れていて西武に指名されたが、なんらかの事情でソフトバンクが、西武に泣きついて甲斐野に変わったのであれば、最悪の前例を作ったことになりますよ。そんなことが許されれば、28人をプロテクトする意味がなくなるし、また今後も同じケースが出てこないとも限らない」
 FA規約では人的補償として指名された選手に拒否権はなく、もし移籍を拒否した場合は、資格停止選手となり、金銭補償に替えられる。過去に人的補償を拒否して資格停止選手になったケースはないが、2017年に中日と日ハムの間で今回と似た事例はあった。FAで大野奨太を失った日ハムが人的補償にプロテクトから外れていた“レジェンドストッパー”の岩瀬仁紀を指名したが、岩瀬が移籍なら引退と拒否したため“大人の対応”を見せて金銭だけの補償に落ち着いた例だ。
 その後、西武に指名された巨人の内海哲也、広島に指名された巨人の長野久義、横浜に指名された巨人の工藤公康らのビッグネームは、いずれも拒否することなく移籍を承諾していたが、今後“第3の事例”が出てくる可能性は否定できないだろう。
 また里崎氏は、ソフトバンクのフロントの見通しの甘さを指摘した。
「西武は過去にも巨人から内海を獲得した例がありベテランであっても和田を取りにくるのは十分に予想できたこと。昨年8勝をあげて現状ではローテーの2番手の位置。しかも、隅田や佐藤ら若手に左腕が多い西武にしてみれば最高のお手本となり、いい影響が期待できる選手。外れていたら当然取りにいきますよ。絶対にプロテクトしておかねばならなかった選手でしょう」
 そしてSNSやネット上で活発に議論されている問題のひとつが人的補償制度の是非だ。「人的補償は悪魔のシステム」「この制度は見直すべき」「選手の人格を考えるべき。駒ではない」という廃止あるいは見直しを求める意見の一方で、「鷹ファンが人的補償に文句言っているけど、戦力均衡に必要な制度だってことをわかっているの?」などの現状維持を求める声も少なくない。
 今回、感情論だけでいえば、和田も甲斐野もある意味、被害者となったわけだが、本当にA、Bランクに相当するFA選手を獲得した場合の人的補償は、「悪魔のシステム」なのだろうか。

 

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