なぜ19歳の福田師王が独ボルシアMGでトップチーム昇格の大抜擢を受けたのか?
「日本の未来のスター」
「板倉くんと共にトップチームでプレーする光景が見られるなんて」
「ワールドクラスのFWになってくれよ」
「ストライカーとして10代でここまで来たか!」
「正直、私たちの若い選手にこれほど興奮したことはない」
身長178cm体重70kgと決して大柄ではない福田は高校時代に、日本代表でゴールを量産した小兵FW岡崎慎司(37、シントトロイデン)のプレー映像を徹底的に研究。相手ゴール前での動き出しを磨き、右足、左足、頭とすべてでゴールを狙える異能の得点能力を身につけ、練習参加したボルシアMGからオファーを勝ち取った。
渡独後は走力を含めたフィジカルの差を何度も痛感させられ、特に臀部を中心とする下半身を一から鍛え直した。ドイツ語がまだ不得手な状況で、ミーティングではボードに自分が得意とする動き出しの形を書き記した上でパスを要求した。
身振り手振りで努力を積み重ねてきた成果を、福田はこう語ったことがある。
「最初は『ん?』みたいに言われたんですけど、一番効果があったのは試合で点を決めたこと。そうなればボールがたくさん出てくるようになりました」
今夏のパリ五輪出場を目指すU-22代表に初招集された、昨年11月のU-22アルゼンチン代表戦でも、途中出場からわずか2分後にゴールをゲット。数日間の代表合宿で裏への抜け出しなど、得意とする動きをチームメイトと共有した賜物だった。
ただ、シュマトケSDは公式HP上でこう語ってもいる。
「師王は少なくとも今シーズン終了までトップチームのメンバーとなり、チームのドレッシングルーム内に自分のロッカーも持つことになる」
ここから先は弱肉強食の世界。確固たる結果、福田の場合はゴールを決めれば生き残り、逆ならばサンチェスのように武者修行に出されかねない。サンチェスは今シーズンのブンデスリーガ前半戦で出場3試合、プレー時間わずか14分で無得点だった。
複数のJ1クラブも加わった争奪戦から、福田がボルシアMGを選んだ理由はただひとつ。Jリーグを介さずに渡欧した日本人選手が、ほとんど成功していないからだ。
「自分が成功例を作っていきたいし、成功しなければいけない」
挑戦者魂をたぎらせていた福田は、ついに本当の意味でのスタートラインに立った。今シーズンは残り17試合。ホームのボルシア・パークにアウクスブルクを迎える21日(日本時間22日)の後半戦初戦に臨む、20人の登録メンバー入りをかけた日々の練習から、発音の関係でサポーターから「シオ」と愛される福田の勝負が次なるステージに突入する。
(文責・藤江直人/スポーツライター)