なぜ“カリスマ”辰吉丈一郎は岡山のジムから初の世界王者ユーリを称え、拳を痛めKOできなかった次男の寿以輝を「無冠じゃ飽きられる。辰吉の名前だけじゃ」と厳しく突き放したのか?
試合後、寿以輝は「今年はなんらかのベルトを取りたい」と訴えた。天心と同じくバンタム級の日本、OPBF東洋太平洋、WBOアジアパシフィックのタイトルに照準を絞る。日本王座が堤聖也(角海老宝石)が返上、1位、2位で決定戦が行われる予定。WBOアジアパシフィックのベルトは、西田凌佑(六島)が持っているが、IBF世界同級王者への挑戦が本決まりになると返上するだろう。またOPBF東洋太平洋同級王座は、この26日に敵地で王者のフローイラン・サルダール(フィリピン)に栗原慶太(一力)がダイレクトリマッチで挑むことになっている。
だが、辰吉は手厳しかった。
「そういう風にやっていかんとモチベ―ションを保っていかれへん。27歳で無冠でいたらみんなに飽きられる。辰吉の名前だけやん」
またコンビネーションブローに進化が見られたように思えたが、「ドンドン、ジャブジャブ、ドンドンと打たないとあかんの痛めた拳のせいか、チョコチョコ、ドンとなっていた。あれはコンビネーションとちゃうよ」とメリハリをつけることができていないとバッサリ。
「とにかくブランクが多すぎる。もったいない」と嘆いた。
また自らの現役時代に重ねて、試合中に手を痛めた場合を想定しての準備をしていなかったことも指摘した。
寿以輝は「控室にいたんで何してんの?って、おまえこそ何してんねん?って。いつものように脈を測られた」と、親子のやりとりを明かした。「多分、骨折はしていない」と寿以輝は言うが、また拳の回復のために長期休養が必要ならば、せっかくのベルト獲りに狂いが生じてしまう。寿以輝は、入場曲に辰吉家として親交のある坂本博之氏が現役時代に使ってたドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」を流した。この勝利で日本ランキングに復帰することはほぼ確実。それはタイトル戦線という新しい世界へ一歩踏み出す決意表明だった。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)