なぜ青森山田高の“守護神”鈴木将永はPK戦で2発を止めることができたのか…背景にあった異色のルーティン…8日に近江と決勝
PK戦突入を告げる主審のホイッスルが鳴り響いた瞬間、青森山田の正木昌宣監督(42)は勝利を確信したという。理由は言うまでもなく鈴木の存在に集約される。
「1年生のころから真面目に、コツコツと努力する姿を見てきました。誰よりも早く練習に出てくるだけでなく、全体練習後もキーパーコーチと居残っている。最終学年になってからはPKストップだけでなく、試合中のビッグセーブを含めてチームを勝利に導くプレーも多かった。われわれだけでなく選手たちからも信頼されている絶対的な守護神なので」
チームを救うビッグセーブが飛び出したのは後半40分だった。
直前に同点ゴールを決めていたFW久保原心優(2年)が縦パスに反応。巧みな胸トラップから青森山田のゴール前へ抜け出し、至近距離から左足を振り抜いた直後だった。ギリギリまで動かなかった鈴木は腰をしっかりと落としてシュートコースを狭め、その上で強烈な一撃を左の太もも部分に当ててコーナーキックに逃れた。
久保原に天を仰がせ、悔しがらせたシーンを鈴木はこう振り返る。
「失点はしましたけど、PK戦になれば自分は自信がありましたし、そうした状況で焦らずに、しっかりと状況を見ながら判断できたと思っています」
8日に再び国立競技場で行われる決勝の相手は、3度目の出場で快進撃を続け、準決勝第2試合では堀越(東京A)に3-1で快勝した近江に決まった。2大会ぶり4度目、正木体制下では初めてとなる選手権制覇へ向けて鈴木はこんな言葉を残している。
「ゴールキーパーの出番が少ないのが、一番いい勝ち方だと思っています。自分がこうしたい、といった欲を出すのではなくて、チームとしてやるべきプレーを徹底しながら、そのなかで(出番が)いつ来てもいいような準備をしたい」
卒業後は東海大に進学して、サッカーを続けていく青写真を描いている。シュートストップに楽しさを覚えた小学生年代から魅せられ、体の急激な成長とともにスケールを増してきたゴールキーパー人生における一世一代の大勝負を、鈴木は自然体で待っている。
(文責・藤江直人/スポーツライター)