ついに代表チーム離脱の伊東純也は性加害の疑惑が晴れるまで“ジェンダー平等大国”の仏では苦しい立場へ置かれる可能性
日本サッカー協会(JFA)は1日、女性への性加害の疑いで刑事告訴されたMF伊東純也(30、スタッド・ランス)が、アジアカップ・カタール大会を戦っている日本代表から離脱すると発表した。伊東の心身のコンディションを考慮したと理由を説明した。スタッド・ランスも公式HP上で「選手との連帯を示す」と声明を発表したが、同時に「女性に対するあらゆる形の暴力との戦いへ取り組む」とも表明。女性の人権問題にセンシティブなフランスにおいて、伊東側も虚偽告訴容疑で刑事事件として“逆告訴”した問題の事実が明らかになるまで、苦しい立場に置かれる可能性が出てきた。
「心身のコンディションを考慮した結果」
刑事告訴された伊東を巡る波紋が、報道から一夜明けてさらに広がった。
JFAは1日夜に公式HPを更新し、中東カタールで開催されているアジアカップに臨んでいる日本代表から、伊東が離脱することが決まったと発表した。
グループステージの全3試合に出場した伊東は、性加害の疑いで刑事告訴されたと週刊新潮のニュースサイト『デイリー新潮』が報じた直後に行われた、前日31日のバーレーン代表との決勝トーナメント1回戦をリザーブのまま終えていた。
難敵イラン代表との準々決勝を3日に控えた状況で、主力の一人である伊東が緊急離脱するに至った理由を、JFAはリリースのなかでこう説明している。
「伊東純也選手に関する一部報道について、日本サッカー協会(JFA)では報道されている事実関係の内容について当事者の主張が異なっていると理解しており、慎重な対応が求められると考えています。JFA としては、伊東選手本人の心身のコンディションを考慮した結果、伊東選手が本日付でチームを離れることを決定しました」(原文ママ)
JFAに先駆けて動いたのが、伊東が所属するスタッド・ランスだった。
クラブの公式HP上で「伊東純也に関して、日本のメディアによる前日の報道と選手が起こした名誉毀損の告訴に留意しています」で始まる声明を発表。伊東側も1日に虚偽告訴容疑で刑事告訴した状況を踏まえた上で、次のように続けている。
「日本人ストライカーの人間的な資質と振る舞いに対して、スタッド・ランスはこれまで一度も疑問視したことはありません。しかし、今回メディアで報道された出来事が大阪でのインターナショナルブレイク中に行われた状況もあり、大阪の司法当局による調査を一方的に裏づける情報もまた持ち合わせていません。いま現在に至るまで、私たちは選手との連帯を示しています。同時に今後は真相の解明につながる具体的な証拠を待ち望むとともに、いかなる法的な進展に対しても細心の注意を払いながら見守っていきます」
世界経済フォーラムが毎年夏に発表している、世界各国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数の最新版で、フランスは146カ国中で40位にランクされている。かつてはヨーロッパを代表する男尊女卑社会として知られたフランスはいまや、ジェンダー平等大国へ変貌を遂げている過程にある。ちなみに同指数で日本は125位だった。
必然的に性加害を含めた女性への暴力問題に対して、厳しい視線が向けられる社会的風潮がある。こうした状況を受けて、スタッド・ランスは声明でさらにこう続けた。
「しかし、スタッド・ランスはこのような重要なテーマ(女性への暴力問題)を無視することはできません。活動しない、あるいは沈黙を保つことも望んでいません。私たちはここ数シーズン、フランスのプロフットボールリーグと共同で、女性に対するあらゆる形の暴力との戦いに取り組んできたことをあらためて表明するとともに、今後へ向けた新たな啓発活動に取り組んでいることも合わせて発表させていただきます」