「ちょっと違和感がある」人的補償でソフトバンクから西武へ移籍の“渦中の人”甲斐野央が入団会見
ソフトバンクにFA移籍した山川穂高内野手(32)の人的補償で、西武に加入した甲斐野央投手(27)が1日、埼玉県所沢市の球団事務所で入団会見に臨んだ。一部スポーツ紙が1月11日に、ベテラン左腕の和田毅(42)が人的補償で指名されると報じた数時間後に急転直下で決まった移籍。最速160kmを誇る中継ぎ右腕は「西武の人間になるんだ、という思いはあったけど、徐々に実感がわいてきた」と激動の日々を振り返りながら、ブルペン強化が急務の西武の力になりたいと抱負を語った。
「入団会見が遅くなってしまったのは球団が僕の自主トレを優先してくれたから」
ちょっとした違和感を覚えながら、甲斐野はひな壇に座った。
東洋大から2018年のドラフト1位でソフトバンク入りして6年目。プロ野球界の“正月”と位置づけられる2月1日に、ユニフォームではなく縦のストライプが入った上下のスーツに身を包み、ネクタイを締めるのは初めての経験だったからだ。
「それこそ、他のチームのみなさんのSNSを見ると『明日からキャンプだ』とか、今日なんかもおそらく『キャンプ、頑張るぞ』といった声が上がっているなかで、僕は入団会見に臨んでいる。ちょっと違和感がある、という感じですね」
西武は昨年に続いて2月1日にキャンプインしない。昨年から指揮を執る松井稼頭央監督(48)が、選手たちが自覚と責任を持って自主トレを積んでいるなかで、慣例に足並みをそろえる必要はないと判断。今年は一軍相当のA班が宮崎県日南市の南郷中央公園野球場、二軍相当のB班は高知県高知市の春野総合運動公園野球場で6日から始動する。
甲斐野がその西武へ移籍すると発表されたのは1月11日だった。
この日は早朝から2度にわたって驚かされた。まずはソフトバンクにFA移籍した山川の人的補償として、西武がパ・リーグ最年長選手である42歳の左腕、和田を指名すると一部スポーツ紙がスクープ。これがSNS上を騒然とさせた。
松坂世代の最後の一人であり、昨シーズンも8勝をあげたソフトバンクの顔でもある和田がいなくなるかもしれない。しかし、同日夕方に西武へ移ると正式発表されたのは、和田がプロテクトから外れていた状況に驚かされた一人の甲斐野だった。
その瞬間に抱いた偽らざる心境を、甲斐野は会見でこう明かした。
「西武の人間になるんだ、という思いはあったけど、徐々に実感がわいてきたし、今日でもっと実感がわいた。もちろん初めての経験でしたし、驚きました。すぐに切り替えられたわけではないですけど、西武で絶対に活躍してやる、という思いに変わってきました」
山川はソフトバンク入りが発表された昨年12月19日に入団会見へ臨んでいる。対照的に甲斐野の場合は、発表から3週間もの時間が空いたのはなぜなのか。
「(3週間が)長く感じたかどうかで言えば、すごく長かった。短くはなかったですし、入団会見が遅くなってしまったのは、球団側が僕の自主トレを優先してくれたからです。すごく選手ファーストだと思いましたし、しっかりと自主トレができました」
ソフトバンクで6年目を迎えるシーズンを前提に、開幕から逆算しながら甲斐野はスケジュールを立てていた。そして、自主トレの初日がくしくも1月11日だった。スケジュールを狂わせてはいけない、という球団側の配慮もあって、引っ越しなども済ませた後に、他球団ならばキャンプインしている1日に晴れて入団会見が設定された。
そして、自主トレに励んできた時間が、自分もプロテクトから外れていた現実に抱いた思いを、新天地・西武で前へ向かって歩んでいく決意に変えた。
「本当にいろいろな方から、ありがたい言葉をいただきました。同じ球団でずっとプレーしていくのもすごいと思いますけど、違う球団でのプレーを経験していくのも、これからも続いていく野球人生において自分の財産になるとポジティブに考えられたというか。そういう発想のもとで、気持ちを切り替えられたんじゃないかと思います」