阪神の佐藤輝明は“鳥谷イズム”の注入で「三塁の達人」となり岡田監督の信頼を勝ち取れるか?
鳥谷氏は、守備のスキル向上が生み出す効果について力説した。
「守備でミスをしたり、思うようにできなかった場合にはバッティングに響く。でもレベルアップして、守備への負担を減らし、周りではなく、自分で安心して守れるようになれば打撃に生きてくる。守備練習も打撃に生きる」
昨季は132試合に出場し、本塁打がリーグ4位タイの24本、打点が同3位の92でチーム2冠。四球数54、出塁率.339、長打率.498は、すべてキャリアハイだった。特に9月は打率.344、7本塁打、23打点と大爆発して優勝へのラストスパートの原動力となったが、4月は、打率.200と低調。6月は打率.179、1本塁打、8打点の大不振で6月25日に2軍落ちを味わった。7月も打率.191、3本塁打、9打点と低迷。8月には再びスタメン落ちするなどトンネルを抜けることに苦労した。 日本シリーズも日本一の影に隠れたが、打順を6番に下げられ、シリーズ打率.148、0本塁打、1打点と“逆シリーズ男”となってしまっていた。
オフにはハワイの優勝旅行を途中で切り上げて、大谷翔平が動作解析&技術指導を受けていることで知られる米国シアトルの「ドライブライン」を訪れた。今キャンプでは、明らかに打撃フォームと、ボールを迎えるタイミングが変わり、安定感が増した。フリー打撃を見ていて、特徴的なのは打球の角度がよくなり、それが増えていること。実戦になって、その効果がどう出るかだろうが、鳥谷氏が語るように、守備への不安が解消されれば、打席により集中できる環境が整うのかもしれない。
すでにキャンプで3度目となる特守を終えた佐藤も、計100分を超えた鳥谷教室に手ごたえを感じとっていた。
「これまでは(グラブを)引いて捕るイメージだったが、(前へ)出していくことを引き出しの一つとして習得できれば。実際に打球を捕球してみないとわからないが、感覚としてはいい感じでできた。教えてもらったことを続けていきたい」
そして20個の失策数を「半分くらいに減らせれば」と目標を掲げた。昨年の三塁のゴールデングラブ賞は、横浜DeNAの宮崎で9個だった。記者投票のゴールデングラブ賞は失策数だけでは決まらないが、他球団の顔ぶれを見てもヤクルトが村上、巨人が坂本、広島が未知の新外国人、中日が石川。坂本がフルに出場してくれば、ゴールデングラブ賞の最有力候補だろうが佐藤にも十分にチャンスはある。
現役時代、三塁へのコンバート初年度にゴールデングラブ賞を獲得している鳥谷氏が言う。
「サード特有の動き、角度、動きがあるが、練習をすれば良くなる。どれくらい意識して普段からやるか。1か月やったからできる問題じゃない。1年、5年たってもできない人もいる」
これこそが大事な金言だったと思う。
サトテルが、不動の「5番・三塁」となれば、虎の連覇の可能性がさらにアップすることになる。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)