「穴口選手と年間最高試合を戦った堤に世界挑戦機会を与えたい」両国で最強挑戦者とV1戦のWBAチャンプ井上拓真の陣営が計画
プロボクシングのトリプル世界戦(24日・両国国技館)の前日計量が23日、都内の東京ドームホテルで行われ、V1戦に挑むWBA世界バンタム級王者の井上拓真(28、大橋)、WBC世界同級王座に挑戦する元2階級制覇王者の中谷潤人(26、M.T)、日本人3人目の4階級制覇となるWBO世界スーパーフライ級王座決定戦に臨む田中恒成(28、畑中)が、それぞれの対戦相手と共に一発で計量をクリアした。注目はIBF世界スーパーフライ級王座を9度も防衛している最強挑戦者のジェルウィン・アンカハス(32、フィリピン)を迎える井上拓真だ。防衛に成功すれば次戦は、石田匠(32、井岡)との指名試合になるが、5月6日に東京ドームで開催される予定で進んでいる兄の尚弥(30)のビッグマッチでの兄弟世界戦を立候補。また陣営は、年間最高試合を獲得した前日本バンタム級王者の堤聖也(28、角海老宝石)との対戦構想も計画している。
5・6東京ドームでの兄尚弥との兄弟世界戦にも立候補
ツーショット撮影の際にグータッチを求めたのは井上拓真の方だった。
友好ムードのままフェイスオフを終えるとまた拓真から手を差し出した。
「(アンカハスは減量が)きつそうだとは思ったけど、油断することなくいきたい。めちゃくちゃ楽しみ、初めてのメインだし、相手が強い方がワクワクする。元世界王者を相手に何もさせず、パーフェクトで勝ちたい」
ルールミーティングでも、日本式のテープピングを下地として貼る日本式のバンテージの巻き方にアンカハス陣営も同意。また使用グローブは、井上が日本製ウイニング、アンカハスは総合格闘家などが使用する珍しい米製HAYABUSA(ハヤブサ)となった。佐久間トレーナーが相手のグローブをチェックしたが、「薄く柔らかいと感じた」という。
アンカハスは、IBF世界スーパーフライ級王座を9度防衛した39 戦 34 勝(23KO)3 敗 2 分の豊富なキャリアを誇る強打のサウスポー。当て勘のいい右のジャブが伸びてくるし、右フックと左のストレートがフィニッシュブロー。2021年の大晦日には、現・WBA世界同級王者の井岡一翔(志成)との統一戦が発表されていたが、新型コロナの影響で入国が制限されて流れ、その後、2022年2月にフェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)に判定負けし王座から陥落、同年10月にダイレクトリマッチで対戦したが再び判定で敗れた。減量苦だったためバンタム級への転級を決断し、昨年6月にテストマッチで5回TKO勝利している。
「過去一最強の相手」と井上も激戦を覚悟している相手だ。
前日会見で、大橋秀行会長は、自信度を「100%」と断言し「スピードとスタミナが上回っている」としながらも「強敵には間違いない」と警戒。公開練習を視察した際には、名王者を引き合いに出して「リカルド・ロペス、ローマン・ゴンサレスといったレベル」とまで評した。
一方のアンカハスは、パンツを脱いで計量をクリアすると、すぐさま待機スペースに戻り、関係者が手作りしたタッパーに入ったパスタをかきこんだ。
「ベストの状態だ。井上も調子がよさそうだった。いい試合になるだろう」
井上尚弥と4団体統一戦を戦ったマーロン・タパレス(フィリピン)もプロモートしていた“やり手”プロモーターのショーン・ギボンズは、自信度を大橋会長の100%に10%を上積みした「110%」とし、「かつてスーパーフライ級に君臨した男。ボディも含めたあらゆるパンチで勝っている」と口をとがらせた。
簡単な相手ではない。いかにペースを奪いあうかの高度な技術戦となる。ただ階級を下から上げてきたアンカハスと、スーパーバンタム級でも地域タイトルを取った井上とのフィジカルの差が勝敗を分けるのではないか。