「穴口選手と年間最高試合を戦った堤に世界挑戦機会を与えたい」両国で最強挑戦者とV1戦のWBAチャンプ井上拓真の陣営が計画
井上には負けられない理由がある。
最終目標は「バンタム級の4つのベルトを統一すること」だが、すでにV2、V3戦として、2つのビッグマッチが計画されている。
アンカハスを撃破すれば次戦は同級1位の石田匠(井岡)との指名試合となるが、その防衛戦を5月6日に東京ドームで開催予定の兄の尚弥と“悪童”ルイス・ネリ(メキシコ)のセミファイナルに入れ込む兄弟世界戦が計画されている。
井上は、この日、「可能であれば大舞台なんで(兄弟世界戦を)やりたい気持ちがありますね。そのためにも絶対負けられない?そうですね」と東京ドーム決戦への参戦を立候補した。ただ試合間隔が、約2か月しかなく、今回の防衛を怪我などのダメージを負うことなくクリアすることが条件にはなる。
そして、その次のV3戦として、さらに話題を呼ぶカードが計画されている。選択試合として王者の井上側が、挑戦者を選べるが、2023年度の年間最高試合(世界戦以外)の勝者で、敢闘・努力賞にも選ばれた前日本バンタム級王者でWBAで現在4位にランキングされている堤を指名しようというのだ。
大橋陣営は「連続防衛することが条件になるが、統一戦に進む前の対戦候補として堤がいる。あれだけの試合をやってのけた堤にチャンスを与えたい」と明かす。
堤は昨年12月26日に有明アリーナで、井上尚弥の4団体統一戦のセミで、賞金1000万円がかかった「井上尚弥4団体統一記念杯・バンタム級モンスタートーナメント」の決勝戦で自らのベルトもかけて穴口一輝氏と対戦した。堤が4度のダウンを奪い、判定で逆転勝利した、その試合は、年間最高試合に選ばれたが、試合後、穴口氏の様子が急変。控室で意識を失い緊急搬送され開頭手術を受けた。懸命の治療が施されたが、2月2日に帰らぬ人となった。19日の年間表彰式で井上尚弥は「国内年間最高試合を受賞した穴口選手の試合は、あの日見たファンの皆さんの心の中で生き続け輝き続ける」とスピーチ。
初めて公の場に姿を見せた堤も、気持ちの整理をつけていた。
「穴口選手は本物のボクサーでした。悔やまれるのは、今日、この日、(穴口氏と)一緒にいれなかったこと。あの試合は誇りに思っている。彼に限らず、これまで戦ってきた人…人生の潰し合いと思ってボクシングをやっているから。戦ってきた人たちへの思いはある。(穴口氏には)よりその思いは強い。すべてを覚悟した上で、今後とも自分のスタイルのボクシングを皆さんに見せていきたい。世界は必ず取ります」
志半ばにして、この世を去った穴口氏の思いを自らの拳に乗せて世界ベルトを奪取することを宣言した。このバンタム級トーナメント及び年間最高試合をプロモートしたのは大橋ジムだった。大橋ジムサイドには、悲しい出来事の当事者となった堤が熱望する世界戦を実現してあげたいとの使命感があり、井上拓真の挑戦者として堤を指名するプランを計画しているのだ。もし実現すれば熱い戦いになることは間違いない。井上が未来に待ち受ける話題のカードを実現するためにも、絶対に負けられないアンハカス戦となる。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)