なでしこJに敗れて五輪切符逃した北朝鮮の監督が回答拒否、判定不満、そして号泣、拍手…衝撃の試合後会見の一部始終
女子サッカーのパリ五輪アジア最終予選第2戦が28日に国立競技場で行われ、なでしこジャパンが2-1で北朝鮮女子代表を撃破。0-0で引き分けた24日の第1戦との合計スコアで難敵を上回り、2大会連続6度目の五輪出場を決めた。前半26分にDF高橋はな(24、三菱重工浦和レッズレディース)のゴールで先制すると、後半32分にはMF藤野あおば(20、日テレ・東京ヴェルディベレーザ)が追加点。直後に1点を返したものの敗れた北朝鮮のリ・ユイル監督(39)は、試合後の会見で韓国メディアの質問を拒否。GKの山下杏也加(28、INAC神戸レオネッサ)のファインセーブによってかきだされノーゴールと判定された幻のゴールやVARが導入されていなかったことなど審判への不満を口にし、最後は号泣して会場を去った。
東亜日報の記者の質問を拒否
記者会見場に緊張が走った。
アウェイチームの監督から臨む試合後の公式会見。なでしこに2戦合計1-2で敗れ、3大会ぶり3度目の五輪出場を逃した北朝鮮のリ監督が、終わったばかりの90分間を「ともに全力を尽くした、素晴らしい内容だった」と総括した直後だった。
質疑応答で最初に指名された韓国紙『東亜日報』の男性記者による質問を、通訳が日本語に訳している最中にリ監督が突如として口をはさんできたからだ。
「大変申し訳ありませんけれども、私どもの神経を逆なでするような質問をなさる媒体であるという理由で、いまのご質問にお答えすることはできません」
通訳によれば、男性記者は「敗因は何ですか」とごく普通の質問をしたという。それに対してなぜ回答を拒否したのか。答えは前日会見にさかのぼる。
韓国のテレビ局『チャンネルA』の女性記者が、質問のなかで言及した「北韓(ブッカン)」にリ監督が露骨に不快感を示した。実は韓国国内における北朝鮮の呼び名であり、正式な国号である朝鮮民主主義人民共和国を使えと指揮官も敏感に反応した。両国間でくすぶる歴史的な摩擦が、スポーツ取材の場にも持ち込まれたわけだ。
しかもひと悶着を起こした『チャンネルA』は、実は『東亜日報』の系列メディアだった。こうした関係を把握した上で、公の場で毅然とした態度を取ったリ監督は、フェアプレー精神を貫いた自チームの姿勢を問う日本メディアの質問にはこう答えた。
「アスリートのみならず、一般的にも道徳的にも倫理的にもルールを守ることは非常に重要です。選手たちには常日頃のトレーニングからルールを守るように徹底しているし、そのなかでフェアプレー精神を身につけ、心がけるように指導している」
もっとも、悔しさがこみ上げてきたのか。北朝鮮国内における女子サッカー指導者の第一人者として知られ、同国がベスト8進出を果たした1966年のW杯イングランド大会の守護神、リ・チャンミョンの息子でもあるリ監督はこんな言葉も紡いでいる。
「オーストラリア出身の主審の判断はもちろん尊重します。しかし、アウェイ戦だった今日に関しては、ホームの日本にやや偏ったというか、かばうような判定が少し見受けられたのではないか。いわばゲストであるわれわれを、もう少し尊重するような判定があってもよかったのではないか。ある意味で釈然としないものがあるなかで、われわれはあくまでも主審の判断にのっとって、最後までフェアプレーを心がけました」
何を指しているのかすぐにピンときた。