なぜ東京ヴェルディは5615日ぶりのJ1勝利を手にできなかったのか?
選手たちのなかで変貌を遂げつつある攻撃への意識をポジティブにとらえた城福監督は、浦和対策として守備面で用意してきた戦術も明かしている。
相手ボール時には2トップの染野唯月(22)と木村が縦関係にスイッチ。1人にアンカーのサミュエル・グスタフソン(31)を、もう1人にはショルツかマリウス・ホイブラーテン(29)のセンターバックのうち、ボールを持つ方をマークさせた。
「そこで両サイドを固めて、センターバックにサイドチェンジをさせないような状況を作る。さらに最終ラインを下げない。勇気を持って方向を限定させて、ボールを奪いに行かせた。おそらく前線から最終ラインまでの距離が、20mくらいの状況がかなりあったと思う。ただ、そうした場面を作れたのは後半の30分くらいまでだった」
城福監督のもとでJ2の3位に食い込み、J1昇格プレーオフを勝ち抜いた昨シーズンのヴェルディを支えたのは、ハードワークを厭わない泥臭さだった。今シーズンもマリノス戦、浦和戦と総走行距離でともに相手を5kmほど上回っている。
しかし、舞台がJ1に変われば、プレーの強度が高い分だけ体力面の消耗も激しくなる。その分水嶺こそが、指揮官が言及した「後半30分」となる。体力を消耗させれば、周到に準備してきた守備戦術にも綻びが生じ、おのずと押し込まれてしまう。
痛恨のPKを与えた山越は、先発フル出場を果たしたなかで総走行距離がチーム内で4番目に多い11.548kmに達していた。待望のJ1初ゴールを決めただけでなく、10.917kmを走破して守備面でも大きく貢献し、後半39分に交代した木村は言う。
「あれだけ押し込まれる時間が続いたら、やはりああいうミスが出てしまう」
城福監督は打開策として、流れを変えるゲームチェンジャーの必要性をあげた。
「攻守において、ゲームチェンジャーを育てていかないと。J1には後から出てくる選手が、ゲームチェンジャーになるようなチームがたくさんあるので」
例えば浦和は後半16分に一挙3人を投入するなど、5枚の交代カードをすべて駆使。興梠や中島、パリ五輪世代の大畑らを次々に投入して、土壇場でPKをもぎ取った。