なぜ鹿島も撃破した無敗の町田はJ1でも旋風を巻き起こしているのか…青森山田高仕込みのロングスロー戦法も通用?!
堅守を土台にJ2を制した昨シーズンの陣容に、さらにドレシェヴィッチ、柴戸(前浦和レッズ)、仙頭(前柏レイソル)、オ・セフン(前清水エスパルス)らを補強。日本代表経験のあるGK谷晃生(23)もガンバ大阪からDF昌子源(31)も鹿島から加入。セレッソ大阪から期限付き移籍していたパリ五輪世代の藤尾も完全移籍に切り替えた。
さらにチーム力を充実させても、根本的な戦い方はまったく変わらない。ロングボールで攻守両面のスイッチを入れ、守備では連動したハイプレスで相手に重圧をかけ、攻撃ではミスの少ないセットプレーや青森山田の十八番だったロングスローを多用する。ロングスローで賛否両論が渦巻いても意に介さず、鹿島戦では前後半で7回放った。
平河の言葉を聞けば、指揮官の哲学がチーム内に脈打っているのがわかる。
「失点に対してチームとしてアレルギー反応を持っている。開幕して一度も先制されていないので、そこの強みはこれからもはっきりしていきたい」
ガンバ大阪、名古屋グランパス、そして鹿島とJ1リーグ優勝経験を持つオリジナル10と対戦した開幕3戦で2勝1分けの勝ち点7、得点3に対して失点1の成績で暫定3位に浮上した。唯一の失点は開幕戦で同点とされる直接FKを決められたもので、流れのなかから喫した失点はない。鹿島に対しても枠内シュートわずか1本に封じ込めた。
スコア上では最少失点差の1-0の勝利を、黒田監督は何よりも喜ぶ。
「どうしても守勢になる部分が出てくると思いますけど、そのなかでもわれわれは1対0で勝つ、クリーンシートで勝つところを全員がしっかりと共有している。実はこの1-0という状況が、われわれが最も優位性を持ってプレーできる点差なので、そういう意味ではそれほど慌てることなく、すごく落ち着いて戦ってくれたと思っています」
指揮官の厳しさを象徴する采配もあった。
右サイドで先発していたバスケスが負傷し、前半22分にFW藤本一輝(25)と交代した。しばらくして藤本と左の平河を突然入れ替えた理由を黒田監督はこう語る。
「バスケスが退いてから、右サイドから進入される場面が多かった。途中出場の藤本がフワフワと試合に入ってしまい、ボールサイドに対して甘くなったことが原因のひとつになったなかで、それを阻止するために平河の守備力を右サイドに持っていった」