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  • 「なんで今さら」「もっと厳しい処分を」なぜJBCは9か月も遅れてドーピング検査で大麻成分検出のWBAチャンプ井岡一翔に戒告処分を下したのか…SNSやネットでは物議
JBCが4階級制覇王者の井岡一翔に戒告処分を下した。ドーピング検査で大麻成分が検出された問題で倫理規定違反を問うた(写真・山口裕朗)
JBCが4階級制覇王者の井岡一翔に戒告処分を下した。ドーピング検査で大麻成分が検出された問題で倫理規定違反を問うた(写真・山口裕朗)

「なんで今さら」「もっと厳しい処分を」なぜJBCは9か月も遅れてドーピング検査で大麻成分検出のWBAチャンプ井岡一翔に戒告処分を下したのか…SNSやネットでは物議

 井岡を「日本男子の世界戦最多勝利記録を有し、ボクシング界を代表するボクサーとして高い知名度を有し、その行動がボクシング界の信頼に小さくない影響を及ぼす立場にあり、常に品位を高めボクシング界の信頼を維持するよう務めることがとりわけ期待されている」と認めた上で、その井岡が疑念を呼んだことに「常に品位を高めボクシング界の信頼を維持するように努めなければならない義務を怠り、倫理規定第2条 に違反したと認める」とした。
 推定無罪を採用せず、疑惑の段階で倫理規定にあてはめた今回の処分に対して、井岡サイドは「なぜここまで時間がかかったのか。全く潔白であるのに疑惑で処分を下していいのか。JBCの面子を立てただけでは?」と不快感を示した。戒告処分を確認はしたが、了承したわけではない。ただ、かなりの時間が経過している案件であり、今後の試合には支障がなく、井岡自身も次の戦いしか見ていないため、弁護士を立てるなどして徹底抗戦する考えはないという。
 JBCは、現在倫理委員会の規定を改正し、メンバーをコンパクトにするなど、敏速な処分決定ができるような組織改革に乗り出している。だが、今回の処分決定は、常識では考えられないほど遅い。この日は、同時にナイジェリア選手の替え玉ボクサー事件を起こした興行の主催者だった平仲BSジムの平仲信明会長にはプロモーターライセンスの無期限停止処分を科したが、これも昨年5月に起きた案件。組織のガバナンスに注意を払いすぎて肝心の機能が疎かになっている。批判を受けても致し方ないだろう。それでも、あえて処分を下した背景には、反ドラッグを明確に打ち出していきたいというJBCの方針がある。
 世界的な基準で見れば微量の大麻はドーピング違反には問われず、大麻をドーピングの禁止項目から外している競技団体もある。パフォーマンスに大きな影響を与えないとされ、北米の一部地域では、大麻そのものが合法で、痛み止めなどの医療目的の薬品にも大麻成分が含まれているからだ。
 しかし、一方で、日本では大麻を違法薬物として厳しく取り締まっている。キャンディ&グミのような抜け穴的な大麻が蔓延していることが社会問題化しており、現在は、大麻を所持していなければ刑事罰の対象にはならないが、使用でも処罰の対象になるような法改正の動きがある。JBCでは、これまで明確な基準がなかったJBCルールに、大麻成分の閾値を設定し、正確に素早くドラッグテストができる検査キットを準備するなど、“反ドラッグ”に大きく舵を切る方針を固めた。
 スーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(大橋)と“悪童”ルイス・ネリ(メキシコ)の対戦が5月6日に東京ドームで行われるが、過去にドーピング疑惑を起こしているネリに対して、JBCはWBCに働きかけて、抜き打ちのドーピング検査に加えてドラッグテストを行うことも認めさせた。今回の井岡に対する戒告処分の背景には、それらのJBCの意思表示がある。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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