「何も4月の開幕にピークにもっていく必要はないからな」なぜ阪神の岡田監督はオープン戦10試合目にしての初勝利にも不機嫌モードになりかけたのか?
そういう状況の中でのロッテ戦の勝利には収穫があった。
「伊藤と村上が投げられたから、それだけで十分や」
先発の伊藤は5回を投げてロッテ打線をわずか2安打の無失点に抑えた。
2月23日のオープン戦初戦となる巨人戦で3回を投げてまさかの7失点、続く6日の楽天戦でも、スピードが出ずコントロールも悪く4回で6安打を打たれ2失点した。「なんでやろ?」と岡田監督は心配していたが、この日は、復調の兆しを見せた。立ち上がりは、腕が振れずにボールを置きにいっていた。ストレートの最速も140キロに届かない。マリンには8mの風が吹き荒れて、グラウンド内の体感温度は相当低かった。それらのコンディションを考えてのコントロール重視だったのだろう。二死から角中勝也の打球が、左足にあたるアクシデントがあり、安藤コーチ、トレーナーがマウンドに駆け寄ったが、大事には至らず無失点に切り抜けると、3回くらいから、徐々にピッチが上がって腕が振れ始めた。
圧巻だったのは二死走者無しからトップバッターの岡大海へのピッチング。ツーシームでカウントを取り、110キロの大きく抜いたカーブを外角に落として、追い込むと、インサイドをストレートで勝負しドン詰まりの投手ゴロに打ち取ったのである。緩急とコースで手玉に取った。4回には一死から角中に初球のカーブの後、5球ストレートを続け、ファウルを取りながら追い込み、最後はアウトローにこの日の最速となる139キロのストレートをズバッ。オープン戦打率.500と好スタートを切っている角中がピクリとも動けなかった。さらに5回には、一死一塁から若手の小川龍成に外のボールゾーンのカットボールを引っ掛けさせて、併殺打に打ち取る絶妙のコントロールと投球術も披露した。
岡田監督は「まあ普通ちゃうか。真っすぐは走っていなかったなあ。まだもうちょっと出そうやけどな」と冷静に分析した。
ーー安心したのでは?
「いや普通やん」
伊藤は、このまま順調にいけば、巨人との開幕第2戦となる3月30日の先発が最有力。岡田監督のローテーションの考え方には「左を挟む」という理論と「巨人には左」というこだわりがある。
2番手の昨季の最優秀防御率タイトルホルダーの村上も4回を投げて角中に打たれたタイムリーによる1失点だけに抑えた。8回は小川、友杉篤輝をカットボールで連続三振。ロッテの若手との“格の違い”のようなものがあった。
「低く投げようという意識でしっかりと投げきれた。変化球でカウントを取れたし直球でもファウルを取れてカウント有利に進められた」