ウクライナに快勝したサッカーU-23代表はパリ五輪最終予選を突破できるのか…1勝1敗に終わった強化試合の収穫と課題を考察
パリ五輪出場をかけたアジア最終予選を4月に控えるサッカーのU-23日本代表が25日、北九州スタジアムでU-23ウクライナ代表との国際親善試合に臨み、2-0で快勝した。1-3で完敗した22日のU-23マリ代表戦から先発を10人も入れ替えた日本は、後半3分にMF佐藤恵允(22、ヴェルダー・ブレーメン)が、31分にはMF田中聡(21、湘南ベルマーレ)がゴール。パリ五輪に出場が決まっているウクライナのシュートをわずか1本に封じた。苦戦が予想される最終予選を日本は突破できるのか。チームの光と影を追った。
華麗でも、ましてや豪快なゴールでもなかった。
両チームともに無得点で迎えた後半3分。MF荒木遼太郎(22、FC東京)が蹴った右CKに、ニアサイドでDF関根大輝(21、柏レイソル)が頭を合わせる。山なりの軌道を描きながら、ファーサイドへ飛んでいったボールがクロスバーに当たってポトリと落ちる。次の瞬間、落下点にいた佐藤に当たってゴールのなかへ転がり込んだ。
公式記録ではヘディングシュートと記されていた。しかし、実際は違った。
「鼻に当たって入りました」
今春の明治大卒業を待たずして昨夏にサッカー部を退部。ドイツに挑戦の場を求めてきた佐藤が、ラッキーな形から生まれた先制ゴールに胸を張った。
「どんな形であれ、ゴールはゴールなので。このチームの武器であるセットプレーで、自分にはファーに詰める役割が与えられていた。あの場面ではファーに流れてくると感じていたし、結果的に自分があそこにいなかったらゴールになっていなかったと思う」
今夏のパリ五輪出場をすでに決めているウクライナは、ゴールキーパーから丁寧にビルドアップする自分たちの形を最後まで、かつ頑なに貫き通した。ロングボールをまったくと言っていいほど蹴ってこなかった点で、実は日本との相性は抜群だった。
前半のキックオフ直後から、スピードと球際での強さを兼ね備えた日本のハイプレスがウクライナのビルドアップを寸断。ショートカウンターから何度もチャンスを作るも、ゴール前でのフィニッシュの精度を欠いて得点に至らない展開が続いた。
前半だけで10本を数えた日本のシュート数は、最終的には17本に到達。日本が誇る組織力の高さに、いい意味での個々のエゴを加えよう、を合言葉にして臨んだ一戦で、ウクライナのシュートを前半終了間際の1本だけに封じ込めた。
中盤の底、アンカーのポジションで常に大声を響かせながらフル出場した、キャプテンの藤田譲瑠チマ(22、シントトロイデン)が納得の表情を浮かべた。
「少し前向きになりすぎた場面が何回かありましたし、最後にパスを出せば味方が詰められる、という場面も特に前半は多く見受けられました。それでもシュートを打ってこそいいリズムが生まれる。その意味ではすごくよかったと思っています」
同じくパリ五輪出場を決めている、22日のマリとの一戦は一敗地にまみれた。
開始2分にMF平河悠(23、FC町田ゼルビア)のゴールで先制するも、時間の経過とともに身体能力の高さと規律正しさを融合させたマリに圧倒され始める。生命線のはずのハイプレスも連動を欠き、瞬く間にショートカウンターの餌食になる。3連続失点を喫する完敗にも、アフリカ勢の脅威を初めて肌で感じられたと努めて財産に変えた。