なぜ横浜DeNAの三浦監督は日本で前例のない革新的コーチ陣用で優勝に挑むのか…36歳と38歳の元アナリストが投打チーフコーチ
アナリストとのバランスを考慮して、チーフ打撃兼走塁兼一塁ベースコーチに石井琢朗、打撃コーチには、鈴木尚典、田代富雄、ディフェンスチーフ兼バッテリーコーチとして相川亮二という実績と経験のあるコーチも配置されている。
それでも、よりデータを重要視するスタッフの陣容に見える。
横浜DeNAは、2017年に統計学や動作解析の専門家らを集めたR&D(リサーチ&ディベロップメント)グループを創設し、12球団の中でもデータの分析、活用に最も先進的に取り組んでいるチームだ。日本ではまだ禁止されていない極端な守備隊形を取るシフトディフェンスを使う機会もセ・リーグでは横浜DeNAとヤクルトが圧倒的に多い。沖縄キャンプでは、戦略的パートナーシップを結んでいるダイヤモンドバックス傘下のマイナーチームからアトウェイ・メンドーサ投手コーチとマーク・リード・ヘッドコーチを特別コーチとして招いたが、これもデータの活用、現場への落とし込みを学ぶのが目的のひとつで、常に最新トレンドを常にアップデートしている。
だが、三浦監督はデータ最優先の考え方を否定した。
「データは豊富にあります。動作解析もあり、利用できるものは他球団よりは多いでしょう。すでにキャンプから映像も見てデータを参考にしながら進めていますが、そこだけにとらわれるのもよくないし、感性だけにとらわれるのもよくない。例えば、データでここでは真っ直ぐで攻めてくると出ていても保証はありません。逆にあるバッターの、ここのコースは3割打たれているが、ここのコースは打率0割なんですというデータがあっても、打率0割のコースに3球続ければいいっていうわけでもない。人と人が対戦することなんでね。相手もデータを持っています。選手にもデータだけに偏って欲しくもないし、感性だけでもやって欲しくない。データと感性のバランスが必要なんです」
昨季はベンチで指揮をとる三浦監督の隣には、攻撃時には鈴木コーチがいて、守備時には相川コーチがいたが、今季からは、この2人の隣に、さらに伝達役のアナリストを配備するという。三浦監督が重要視しているのは2人のアナリストのコミュ力だ。
「これまでもベンチに靍岡が入って選手との信頼関係が構築されています。選手にとってアナリストは大きな存在です。選手もアナリストの助言を納得してやるのと、何これ?と半信半疑でやるのでは結果も違います。納得できるようなコミュニケ―ションをとっていくことが大事なんです。もう一人、アナリストをベンチに入れて、攻撃、守備のときの伝達をよりスムーズにします」
昨年まで、靍岡、大原の2人は、試合中だけでなく選手と最も対話をしてきた。求められれば答えを返し、時には、的確な助言を与えた。そこには信頼関係が築かれている。そのコミュ力はチームが勝つために最も必要とされるチームの一体感につながる。