センバツで見つけた夏が楽しみなドラフトの逸材10人…ノムさん“右腕”元ヤクルト編成部長が厳選
第96回選抜高校野球大会の決勝が3月31日、甲子園球場で行われ、健大高崎が報徳学園に3-2で逆転勝利し、学校としても県勢としても初優勝を成し遂げた。今大会もプロ注目のドラフト候補が大会を盛り上げた。“名将”故・野村克也氏が最も信頼した“右腕”として知られ、阪神ではスカウト、ヤクルトでは編成部長としてドラフトの指揮を執った松井優典氏に「夏が楽しみなドラフトの逸材」をピックアップしてもらった。
大会ナンバーワン投手は報徳学園の今朝丸
スカウトがドラフト1位候補としてマークする特Aクラスは不在の大会だった。
「今年のセンバツはドラフト1位で競合するような選手は少なかった。いわゆる不作の大会にあたるのだろうが、高校生は伸びしろがあり夏に向けての成長で上位で消えそうなクラスの選手は何人かいた」
松井氏が投手の中で一番手にあげたのが、決勝戦の健大高崎戦で3失点しながらも最後まで投げ切った右腕の今朝丸裕喜(報徳学園)だ。8回に今大会最速の149キロを出し、準々決勝では優勝候補だった大阪桐蔭に1失点完投勝利した。
「今大会の投手でのナンバーワン評価は今朝丸。素材は間違いのない投手だったが、それを実戦の中での結果につなげることができるようになってきた。ピッチングを覚えた。評価がガラっと変わった。ストレートは最速140キロ後半で空振りが取れるし、不利なカウントからでも外角にストレートでストライクが取れる。ボールをリリースするタイミングがいい。3位までの上位で消える素材だと思う」
2番手にリストアップしたのは元中日投手、洗平竜也氏の次男、洗平比呂(八戸学院光星)。一昨年の夏の甲子園からマウンドに立っている本格左腕だ。1回戦の関東第一戦では、ドラフト候補の坂井遼に投げ勝って2失点完投。2回戦の星稜戦の立ち上がりに2失点した部分を「どういった心理だったのか。野球を舐めているように見えた」と問題視したが「夏からの成長を感じる。手が長い特徴を生かしてボールに角度があり、右打者の内角へ投げ切れるのが素晴らしい」と称賛した。今大会では最速は143キロだったが、147キロまで伸びているという。
1m86ある大型右腕の平嶋桂知(大阪桐蔭)も評価した。1回戦の北海戦で7回7奪三振無失点。2回戦の報徳学園戦は、制球が定まらず2失点して4回で降板している。最速は154キロだが、今大会では149キロが最速だった。
「体格の割にボールに角度がない点が気になるが、そのポテンシャルは超高校級。ボール先行のカウントからアウトコースの低めでストライクが取れる。夏に向け、どれだけ伸びてくるかを見てみたい投手」
4番手としては吉岡暖(阿南光)と高尾響(広陵)の右腕2人の名前をあげた。吉岡は、3試合で30奪三振、高尾は高知戦で1失点完投。タイブレークで敗れた青森山田戦で7回までノーノーを続行していた。
「どちらも素材型というよりも完成型。より完成度が高いのは高尾だろう。牽制や守備、連携などの部分も出来上がっている。1m72という上背と今後の伸び幅を考えると、現時点では社会人向き。そこでより完成度を高めて即戦力でプロへいくパターンが理想かもしれない。吉岡も完成度が高く、どちらかと言えば、ストレートを見せ球にして変化球で空振りが取れる投手。打者が低めの変化球に手を出すシーンが多かったのは、それだけ腕の振りとキレがいいのだろう。最速は143キロだったがストレートのほとんどが130キロ台。それでも抑え込んでいるのは、スピードガンには出ない体感を打者に感じさせているのだろうが、やはりスピードに物足りなさがある。彼の場合は、大学への進学向き。近年、大学で飛躍的にスピードアップする傾向があるだけに、今後を追いかけたい投手だ」