人的補償で獲得した“8回の男”甲斐野がいるから今年の西武は強い!
7回を託された3番手の本田圭佑(30)は杉本以下に3連打を浴びて1点を返されるが、さらに無死一、二塁でクリーンナップを迎えた大ピンチで魂の力投を見せる。
昨シーズンの首位打者・頓宮裕真(27)を初球で遊飛に、元西武の森友哉(28)を2球目で左飛に打ち取る。続くセデーニョは2-2から投じた7球目でバットに空を切らせた。3人に投じたウイニングショットは、すべて本田が絶対の自信を寄せるチェンジアップ。雄叫びをあげながらマウンドから降りてきた本田の姿に、甲斐野も感銘を受けた。
「あのピンチを1点で抑えたときに『よっしゃ、任せろ』という感情よりも『うわっ、本田さん、本当にすげえ』と。相手の流れを断ち切っただけでなく、ウチにも続くような流れだったので『僕もその波に乗りたい』という思いになっていました」
松井稼頭央監督(48)が就任した昨シーズンの西武は、リーグ3連覇を達成したオリックスに22.5ゲーム差の5位に甘んじた。直接対決では8勝17敗と大きく負け越した。
最終的には嫌疑不十分で不起訴になったものの、強制性交などの容疑で5月に東京地検へ書類送検された山川をシーズン終了まで欠いた打線は、計90本とリーグで唯一の2桁本塁打に終わっただけでなく、総得点でも435と最下位にあえいだ。
対照的にチーム防御率2.93と、オリックスに次ぐ2位につけた投手陣は踏ん張った。しかし、平良が先発に転向したセットアッパーの穴を埋めたとは言い難く、守護神・増田達至(35)も19セーブをあげながら防御率は5.45とやや精彩を欠いた。
ブルペン陣の再編成が急務だった西武にとって、ソフトバンクにFA移籍した山川の人的補償で加入した甲斐野は期待の星だった。甲斐野もそれをわかっていた。自ら選んだ背番号「34」は、セットアッパーを務め上げる上での語呂合わせだったと明かしている。
「ふざけたことを言うかもしれませんが、三振(3・4)という意味もあるのかな、と。僕自身、三振を奪うピッチングへのこだわりもあるので」
カウント0-2からボールを4球続けて西野を歩かせた場面では、守護神のアブレイユへ三振で締めてバトンを託そうと、ツーシームとフォークをすべて低目に集めたところを見逃された。リードした恋女房の古賀が「ちょっと低目にいきすぎた」と苦笑しながら、新たな勝利の方程式を担う甲斐野とアブレイユの姿勢を称賛する。
「自信を持って勢いよく投げ込んでくるので、僕も思い切ってサインを出せる」