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和田は世界最速タイ記録となる3戦目での世界挑戦を目論む(写真・山口裕朗)
和田は世界最速タイ記録となる3戦目での世界挑戦を目論む(写真・山口裕朗)

女子アマ8冠の和田まどか鮮烈の3回TKOプロデビュー…世界最速タイ記録となる3戦目での世界挑戦を目論む

 和田は高校時代から“天才ボクシング少女”として注目を浴びた。全日本選手権を3階級で6度優勝し、世界選手権では2014、2018年にライトフライ級で銅メダルを獲得したが、リオ五輪、東京五輪と国内の選考会で敗れ五輪とは縁遠かった。ラストチャンスと考えていたパリ五輪も代表選考会を兼ねた昨年11月の全日本選手権のライトフライ級決勝で木下鈴花に敗れて引退を決意した。
「アマでは世界一になれなかったが、プロで世界一を目指してはどうか」
 アマ時代から教えを請うていた鳥海会長に説得され、松田の後押しもあってプロ転向を決意したが、すでに29歳。遅すぎるプロデビューである。
「遅いと思います。でも30歳を超えても強い男子ボクサーはたくさんいます。そこに負けじと、私はできると信じている」
 今回は、女子では初の8回戦デビューとなった。アマチュア実績に加え、陣営が3戦目での世界ベルト奪取に目標を掲げているため、そこに配慮しての特例措置。元OPBF東洋太平洋バンタム級王者で敗れたが、元3階級制覇王者の長谷川穂積と激闘を演じたこともある鳥海純会長は「次は夏に地域タイトル。年内に3戦目で世界挑戦させたい」との構想を明かした。
 もし3戦目で世界奪取に成功すれば、日本女子ではWBCライトフライ級暫定王者の富樫直美(ワタナベ)、WBOミニマム級王者の佐伯霞(真正)、WBOスーパーフライ級王者の晝田瑞希(三迫)の4戦目を抜いての最速記録となる。男子を含めても、センサク・ムアンスリン(タイ)、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)の3戦目に並ぶ世界記録だ。
「世界一になってからがスタート。早ければ早いほどいい」
 和田も意欲十分だが、そのステップとなる地域タイトルは、同階級の日本&OPBF王者はジムメイトの狩野ほのか。WBOアジアパシフィックの同級王座は、IBF世界同級王者の山中菫(真正)が持っていて、挑戦したくともできないという難しい事情がある。ベルトの返上を待って、その決定戦に出場するしかないが対戦相手が見つかるかどうかも微妙。今回もデビュー戦相手に何人かの日本人ボクサーにオファーしたが断られてタイ人ボクサーに落ち着いたという経緯もある。  
 また年内に世界へ挑むのも、WBO&WBAの世界同級王者は、1月に黒木優子(真正)を破って新王者となったばかりのジムメイトの松田。まずはIBFの山中がターゲットになるのだろう。
 和田の目標は4団体統一ではなく複数階級王者である。
「4、5つはいきたい」
 女子では48歳まで現役を続けた藤岡菜穂子が5階級制覇を成し遂げている。現在はスーパーフライ級に君臨している晝田といつか世界戦で拳を交えたいとの思いも強い。
 控え室での囲み取材が解け、プロリングに立った今、進んだ道に後悔はしていないか?と尋ねると、募った思いがこみ上げ、和田は号泣した。
「ずっと12年間、金メダルを目指していたんで悔しい気持ちがある。でも環境が変わってプロで世界一を目指したいと思ったとき、このメンバーが私を支えてくれている。みんなに私の世界一をプレゼントしたいなと」
 そう言う和田を鳥海会長、松田、狩野が輪になって見守っていた。
 引き上げる花道でファンからは「感動したよ」と声をかけられた。
「胸が熱くなる試合を次は絶対にしたい」
 和田まどかの“真の世界一”への挑戦が始まった。

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