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1.6キロもの体重超過を犯した堤駿斗が契約ウエイトで元世界王者のモレノと対戦して3回KO勝利した(写真・山口裕朗)
1.6キロもの体重超過を犯した堤駿斗が契約ウエイトで元世界王者のモレノと対戦して3回KO勝利した(写真・山口裕朗)

「反省しろ!」非難と激励の声が飛び交う中で元世界王者に3回KO勝利した“アマ13冠”堤駿斗が涙の謝罪…1.6キロ体重超過の理由は新型コロナ&後遺症だった

「リング上で変な感情を持ち込んだり、リスペクトに欠いて、わざと負けるようなことはしてはいけない。それこそボクシングへの冒涜行為。全力で戦わないといけないと思った」
 そう切り替えた。しかし、まだ新型コロナの後遺症は残ったまま。減量を試みた肉体的なダメージもある。控室ではウォーミングアップさえ満足にできず、シャドーだけで体を温めてリングに上がった。
「負けるのもプロの仕事と覚悟した」という。
「1ラウンドからガンガンいけなかった。強いパンチを出さず、あまり攻めずに勝つ作戦だった。判定も考えて息をあげずにやり過ごそう」
 38歳のモレノに、もはや全盛期のスピードや迫力がまったくなくテクニック勝負にきてくれたため、万全ではなくとも、スピードとパワーで上回る堤は、ジャブを的確にヒットさせて主導権を握り、KOで決着をつけることができた。
 試合後、モレノは「何もコメントはない」とだけ伝え、骨折の疑いのある鼻骨の検査のため病院に直行した。
 体重超過を犯した堤にはJBCからは規定に沿い半年の出場停止処分が下される方向。新型コロナに罹患したという事情があったにせよ元々減量は苦しくスーパーフェザー級への転級を勧告される可能性もある。
「本当に人として成長して、また一から失った信頼を少しずつ取り戻してプロとして胸を張ってリングに上がれるように精進したい」
静かにうつむいた堤は、「フェザー級でやるのは侮辱行為で反省にはならないと思う。(減量の)余裕もない。スーパーフェザー級でやるのもひとつの考え。チームと相談して決めたい」と、転級の可能性を示唆した。今回は結果的にキャッチウエイトで試合が成立したためWBA同級9位のモレノを倒した堤のフェザー級での世界ランキングが上がる可能性があり、転級にスパッと踏み切れない事情もある。
 志成サイドは「堤の考えを尊重する」という方針を示した。
 アマ13冠のホープとして期待された堤は、そのチャンピオンロードで足踏みをすることになった。ABEMAなどがスポンサーにつきプロを名乗る以上、理由はともかく体重超過は許されない失態だった。だが、人は失敗する生き物である。そしてボクシングという素晴らしい競技は、それを取り返そうと努力する人を裏切りはしない。この失態を今後にどう生かすか。堤の生き様が試されることになるだろう。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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