「最後までどうなるかわからへん」“7連勝”阪神の土壇場逆転劇の裏に何があったのか…“雨の戦い”を読み切った岡田監督の洞察力と泥沼マウンドで狂った横浜DeNAの守護神
横浜DeNAの9回は守護神の山崎である。岡田監督は糸原を代打に送った。
ぬかるんだマウンドと土砂振りに近くなった雨が山崎を狂わせた。“宝刀”のツーシームを1、2球と続けて、カウント1-1となったが、まるで変化しない。3球目に選んだストレートが高く浮いた。糸原がそれを見逃さずにレフト前へ運んだ。阪神は代走に熊谷をコールした。
近本、中野が連打で続き、無死満塁の舞台を作った。
山崎は、近本に3球、中野に7球を投じたが、全球がストレートだった。ツーシームをコントロールできないと思った山崎は、山本のサインに何度か首を振った。しかも、そのほとんどが140キロの中盤しか出ていない棒球だった。しっかりとステップした足でマウンドをキャッチして、その跳ね返りで、スピードを乗せて150キロ前後のストレートに変えるのが、山崎のスタイル。ダイナ一句な力投型の山崎にとって雨でドロドロになったマウンドでは、それが精いっぱいだった。
岡田監督は、山崎がそうなることを想定して、9回に勝負をかけたのである。
もう山崎は限界だった。試合後、三浦監督は「昨日のボールは良かった。こういうコンディションだったからか、どうかわからないが、使っている監督の責任」と語ったが、交代機が一手遅れた。続く森下にはボールが抜けて押し出し死球。1点差に迫られて、徳山に代えたが、無死満塁で不調とはいえ虎のクリーンナップを迎えるのは荷が重たかった。
徳山もまた最悪のコンディションの中で制球を制御できない。
5回一死満塁のチャンスには力んでファーストファウルフライに終わっていた大山がコンパクトに振り抜き、汚名返上の同点タイムリーをジャンプしたショートの右へと打ち返す。そして5番に打順が上がっていたノイジーが、勝ち越しの押し出し四球を選ぶ。難しい初球を見極め、カウント3-0からインハイに外れた4球目をよけながら自軍ベンチを向いたノイジーは、何やら大声で吠えた。
「今日の勝ちは自分の前で出塁した選手のおかげ。チームのおかげ。チームの勝利だ」
感情を表に出さない助っ人が珍しく興奮していた。