「ミーティングをしない」阪神の岡田監督は異例の前夜緊急招集でどんな“魔法”をかけたのか…ヤクルトに逆転勝利した舞台裏
1点差に迫られた、その裏に岡田監督がまた意外な手を打つ。一死一塁から中野にバントで送らせたのである。この回の頭から左腕の山本がマウンドに立っていたが、岡田監督は「(送れば)代わるのがわかっていた。右(対)右なんで。なんとかセカンドに送っとけば、どっちか2人(森下か大山)が返してくれるかなという気はあった」という狙いで森下の前に得点圏に走者を進めた。
岡田監督の読み通りに高津監督は山本から右腕の丸山にスイッチ。森下は2球目の外角へ落ちるフォークを引っ張って三遊間を破った。レフトのサンタナが、その打球をジャックル。貴重な5点目がスコアボードに刻まれた。
実は、前日の敗戦後に岡田監督は野手ミーティングを開いていた。
「昨日は終わってすぐ裏にみんな野手集めて今日の対策を言っていた。それに応えてくれた」
非常に珍しい出来事だった。
38年ぶりの日本一に輝いた昨季、岡田監督が試合後に選手を集めてミーティングを開いたことは一度もなかった。もっと言えばコーチミーティングさえ行っていない。もちろん試合前にスコアラーが中心になって行われるミーティングには、岡田監督は参加して、ごくたまに意見も言うのだが試合後に野手を集めるのは異例中の異例だ。
そこで何が語られたのか。
この日の5得点がすべてを物語っていた。
前日のゲームで、阪神はヤクルトの小川、大西、木澤のリレーに6安打、2得点しか奪えなかった。ヤクルトバッテリーの配球傾向は明白だった。走者がいない場面では、ストレートでカウントを整え、変化球で勝負。それもボールゾーンを使う。逆に走者のいる場面では、変化球を軸にした配球に切り替えて、最後にストレート勝負。阪神打線は、その配球の餌食になってしまっていた。おそらくだが、岡田監督は、それを踏まえてシンプルな対策を授けたのだろう。
先制タイムリーを放った小幡は、変化球を頭に置いて粘り、そのボールに食らいついた。逆転本塁打を放った近本は、3球続いた変化球には見向きもせずストレートを仕留めた。
「高めのストレート。今日1日、1球来るかこないか(のボールを)しっかりと仕留めれるようにと粘り強く待ったた。違う球だったら三振でいいや、と思っていた。そこに来たら絶対仕留めるっていう気持ちで待っていました」と明かす。
「ピンチでは変化球を軸にカウントを整え、そこで勝負。あるいは追い込んでからストレート勝負」というヤクルトバッテリーの配球を読んだのである。7回の森下のタイムリーは、「ピンチでは変化球が軸」の変化球を狙い打った。そして何より岡田監督が与えたヒントをすぐに実行できるのが、連覇を狙う阪神打線の実力なのだろう。
先発の大竹は、まだ本調子とは言えなかった。打線についても「もう1点欲しかった」と岡田監督が振り返るように、まだエンジン全開までには至っていない。佐藤の不振も深刻だ。そのチーム状況の中で、貯金を「4」にして3&4月の勝ち越しを決めたのは、連覇への第一歩を踏み出したと評価していい。
今日28日の先発は「一番安定している」と岡田監督が評価している才木だ。現在連勝中。7日のヤクルト戦は、2失点で負け投手となった。
「今日勝ったんで才木もゆっくりね。連敗してると力んだりするかもわからないけど、今日の勝ちで初回から楽に投げられると思う」
岡田監督の読み通りにまた主導権を握りそうである。