なぜ久保建英のパリ五輪出場にレアル・ソシエダはオフシーズンにもかかわらず難色を示すのか?
U-23日本代表が出場権を獲得した今夏のパリ五輪へのMF久保建英(22)の招集に、所属するレアル・ソシエダが難色を示しているとスペイン紙『MUNDO DEPORTIVO』が1日に報じた。パリ五輪の出場資格を有し、東京五輪に続く出場を望んでいるとされる久保だが、実際にプレーするにはソシエダの承諾が必要になる。1968年のメキシコ五輪以来のメダル獲得を狙う日本にとっては重大な問題。なぜレアル・ソシエダは久保の五輪出場にGOサインを出さないのか。
Aマッチデーの期間外開催の五輪にクラブ側は所属選手を派遣する義務を負わない
パリ五輪でメダル獲得を狙うU-23日本代表に難題が持ち上がった。
バルセロナに拠点を置くスペイン紙の『MUNDO DEPORTIVO』は1日、パリ五輪の出場権を獲得したU-23日本代表と久保の招集問題について焦点を当て「久保とパリ五輪、意見がミスマッチするかもしれない」との見出しを取った記事を掲載した。
「日本発の報道によると、日本サッカー協会は久保建英をパリ五輪に招集する意思を固めているとされる。さらにU-23日本代表を率いる大岩剛監督は『久保はパリ五輪出場を望んでいる。あとはクラブ次第』とも語ったという。しかし、ラ・レアル(ソシエダの愛称)は久保をパリ五輪へ派遣する件に関して賛成していない」
同紙は久保のパリ五輪出場が難しいとの見解を示した。
大岩剛監督(51)のもとで2022年3月からパリ五輪を目指して活動してきたチームに、久保は一度も招集されていない。活動期間が重なる森保ジャパンが常に優先されてきたが、パリ五輪世代でただ一人、カタールW杯の舞台にも立ったトップランナーとして、一緒に活動しなくても若い選手たちを引っ張っていく存在だと指揮官も位置づけてきた。
チームの主戦システム[4-1-2-3]のなかで右ウイング、あるいはインサイドハーフでプレーできる久保は、スペインで磨き続けた攻撃力だけでなく、五輪の戦いを知る存在として、メダル獲りをかけたパリ五輪本番でリーダーも演じられる。
しかし、国際サッカー連盟(FIFA)が定める、国際Aマッチデーの期間外に開催されてきた五輪に対しては、クラブ側は所属選手を代表チームへ派遣する義務を負わない。各国サッカー協会からの招集に応じるか否かは、個別の交渉次第となっている。
もちろんパリ五輪も例外ではない。日本サッカー協会(JFA)は、国内組の招集に関しては1クラブにつき最大3人の形ですでに合意している。対照的に海外クラブの所属選手に関しては、個別交渉で前向きな回答を得られないケースが少なくなかった。
たとえばパリ五輪のアジア最終予選を兼ねてカタールで開催され、U-23日本代表が決勝進出を果たしているAFC・U-23アジアカップにおいても、チームの「10番」を背負ってきたMF鈴木唯人(22、ブレンビー)らを招集できていない。
JFAの山本昌邦ナショナルチームダイレクター(ND、66)は、2001年1月1日以降に生まれたパリ五輪世代が数多く海外でプレーしている状況を、日本サッカー界として「非常に喜ばしい」と受け止めるとともに、難題が増えたと複雑な胸中を明かす。
「選手一人ひとりが海外で自信を持って成長してくれている流れは悪くない。ただ、五輪でメダルを目指すのも非常に重要なポイント。そのための交渉は昨年の夏前あたりから継続してきたが、協力していただけるクラブもあるし、一方で難しいクラブもある。選手を招集するところで、本当にハードルが高くなっていると感じている」