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後半のアディショナルタイムに決勝ゴールを決めた山田楓喜が優勝メダルを手に喜びを爆発させた(写真:長田洋平/アフロスポーツ)
後半のアディショナルタイムに決勝ゴールを決めた山田楓喜が優勝メダルを手に喜びを爆発させた(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

パリ五輪での最悪条件を回避した意味あるV…なぜU-23日本代表はウズベキスタンに劇的勝利できたのか?

 常に強気な山田も、フラッシュインタビューでちょっぴり声を詰まらせている。
「前半だけでなく後半が始まっても、相手が間延びしているのがわかっていたので、間で受けてから前を向いてシュート、というイメージができていた。いままで積み上げてきたものが、こういう大きな舞台で、しかも優勝が決まる試合で自分の持ち味として出せた。苦しくてもあきらめずに頑張ってきた成果なのかなと素直に驚いています」
 今大会は「3.5枠」をかけたパリ五輪のアジア最終予選を兼ねていて、4月29日の準決勝でU-23イラク代表に2-0で快勝した時点で最初の目標を成就させた。しかし、8大会連続の五輪出場を決めた選手たちは、大会前からアジア王者を合言葉にしていた。
 そして決勝の結果はすでに組み合わせ抽選会を終えているパリ五輪のグループリーグに大きな影響を及ぼす。優勝国がパラグアイ、マリ、イスラエルと同じグループDに、準優勝国がスペイン、エジプト、ドミニカ共和国と同じグループCに入るからだ。
 グループリーグは7月24日、27日、30日とすべて中2日で行われる。しかし、キックオフ時間がグループDだとパラグアイ戦が19時、マリ戦とイスラエル戦が21時なのに対して、グループCだとスペイン戦が15時、エジプト戦が17時、ドミニカ戦が再び15時と今夏のフランスで予想される酷暑が残る気象条件下となる。
 しかも、グループDはパラグアイ戦とマリ戦をともに南西部のボルドーで戦い、イスラエル戦へ向けて約270km離れたナントへ移動する。対照的にグループCはパリでスペインと戦った後に、約340km離れたナントへ移動。エジプト戦を戦った後は再びパリへ戻って、ドミニカ戦に臨む強行スケジュールも強いられる。
 五輪2連覇中だったブラジルが敗退した南米予選を、1位で突破したパラグアイはひと筋縄にはいかない難敵だ。マリには3月の国際親善試合で、個々の能力だけでなく組織力でも大きな差を見せつけられた末に1-3の完敗を喫している。
 それでもキックオフ時間や移動に加えて、短期決戦に大きな影響を与える初戦の重要性を踏まえればグループC入りは避けたかった。そして優勝を勝ち取ったいま、グループDを1位で突破する戦略に集中できる。準々決勝はグループC及びDの上位2カ国のたすき掛けで行われる。1位突破すれば、ここでもスペインと対戦しない可能性が高まる。
 大会MVPを獲得した藤田が、フラッシュインタビィーでこう語った。
「アジア王者として挑戦できるパリ五輪で結果にしっかりこだわってきたい」
 決勝終了とともにチームは解散する。次に顔を合わせるのは海外遠征が予定されている6月。板倉滉(27、ボルシアMG)を中心にセンターバック陣が有力候補にあげられているオーバーエイジの調整がつけば、6月からU-23代表に合流する可能性も高い。
 今大会は23人が招集され、GK山田大樹(22、鹿島アントラーズ)を除く22人がピッチに立った。しかし、五輪では18人に枠が狭まり、さらにオーバーエイジ枠がフル活用されれば、2001年1月1日以降に生まれたパリ五輪世代は15人しか招集されない。
 もちろん、今大会に招集されなかったパリ五輪世代も、ヒノキ舞台でプレーする夢をあきらめていない。歓喜の雄叫びをカタールの夜空へ響かせた選手たちはそれぞれの所属クラブに戻り、U-23代表への生き残りをかけた戦いをスタートさせる。

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